2020年5月6日水曜日

第2387話 思い出すのは1971年 (その3)

目黒は権之助坂の「支那そば 勝丸」。
違和感を覚えつつも屋台物語を食べ終える。
すると奥からオジさんがで出て来て
接客のアンちゃんと仕込みの段どりを始めた。

ややっ! この人が創業者じゃないか?
たぶんそうだと思う。
70代(?)にしてはわりと若く見える。
屋台は軽トラックだったらしいが
彼が人生最大の転機を迎えたとき、
J.C.も紛争続く大学を横に出ようと心に決めて
海の向こうを彷徨っていたかと思うと、
親近感が湧いてくるのも、むべなるかな。

話し掛けてみたかったが口を衝いたのは
「ごちそうさま」のひと言で
帰って来たのは
「ありがとうございました」の二重唱。

坂を下り終え、大鳥神社に差し掛かったとき、
ふと、この奥の目黒不動に立ち寄る気になった。
世が世だけに長い石段をいとわず、神妙に手を合わせる。
参道を抜け出て、すっかり葉桜となった、
かむろ坂を上り、美容室「W」に到着。
普段よりゆっくり髪を切って貰う。
やはり、この業種も客足が激減したとのこと。

さて、これから行く先をまだ決めていない。
腹ごなしを兼ねて歩けるだけ歩き、
どこか静かな場所にすべり込むのがいい。
前回の理髪後は武蔵小山、前々回が中目黒。
今日は五反田から白金、いや、高輪を目指そう。

桜田通り(国道1号)を北東に向かった。
ラーメンを食べてから2時間半、
しばらくは何も欲しくない。
と言いつつもビールは別腹なんだがネ。

高輪台の交差点を右折、二本榎通りを歩む。
この道筋は大好き。
ほどなく円形の望楼が印象的な
高輪消防署二本榎出張所が見えてきた。

入口にマスク無き来訪者は入所不可なる貼り紙。
ほお~っ、港区は厳しいなァ。
ついでに案内板を読んだら出張所は1933年の築。
当時は周りに高い建物が無く東京湾まで見通せた由。
望楼は昭和46年まで火の見櫓の役目を果たしたという。
ん? 昭和46年? そりゃ1971年じゃないか!
望楼にいっそうの親近感を抱いたのは言うまでもない。

=つづく=