2020年5月12日火曜日

第2391話 カニを食ったんだガニ (その1)

明けて翌日。
最近は多少なりとも外出を控えがちだから
この日もデスク周りや引き出しの中、
雑誌・新聞のスクラップを整理した。

さすがに籠城とまではいかないものの、
内食が増えたので買い出しに出掛けた。
あくまでも買い出しであって、買い占めではない。
年寄りや女性の場合は仕方がない部分もあろうが
大の男があんな真似をするくらいなら
べつに死にたくはないけど、潔く死を択ぶネ。

落ちぶれ果ててもJ.C.は武士じゃ
男の散りぎわだけは知っており申す

どうしちゃったのオマエ? ってか?
あいや失礼、三波春夫のCD聴きながら
コレ書いてたもんで、調子ぶっこきやした。

昼過ぎには家を出、御徒町駅前の「吉池」へ。
例によってその前に昼めしだが
ライスは要らない、ビールが欲しい。
いわゆる昼飲みである。

閃いたのは広小路の「井泉本店」。
とんかつの聖地・上野にあって最も長い歴史を刻む店だ。
何処にでもあるから誰もが知ってる「まい泉」を創業した、
女社長はかつて「井泉」のお運びさんだった。

アメ横周辺の名立たる酒場が軒並み自粛中とはいえ、
前夜に分厚いロースを平らげておきながら
とんかつの連食とはこれいかに?
実はこの「井泉」の利用には裏技があるのだ。

13時に入店すると、
逆L字形カウンターの底辺角に促された。
壁にこの日の営業は15時までとの貼り紙。
1時間もあればOKだから、余裕の裕チャンだ。
生ビールはキリン一番搾り、瓶が同クラシックラガー中瓶。
中ジョッキをお願いする。
”来れば頼む”のお気に入り、かにと胡瓜のサラダも同時に。

おやおや、ジョッキの泡が多いなァ。
泡が落ち着くのを待って、グイ~ッ!
愛飲する銘柄でなくとも夏日の昼下がり、格別である。
早くも整ったサラダはずいぶん緑が濃い。
以前と比べると、かにの絶対量が激減して3分の1程度。
これじゃ、かにと胡瓜のサラダだヨ。

「さるかに合戦」はサルがカニをいじめる話だが
このサラダはカッパがカニをいじめてる。
自分で引っ張り出しといて言うのもなんだが
この民話だか童話だかは
まずカニが殺され、仕舞いにゃサルも殺される。
子どもに聞かせるには残酷過ぎやしないかい?

=つづく=