2020年5月28日木曜日

第2403話 喫茶のあとはクラフトビール

「民生食堂 天平」をあとにして高円寺駅方面へ。
雨の午後のビールとポークソテーはよかったが
このまま都心に戻るつもりはない。
高円寺遠征を思いついたとき「天平」の次はここ。
そう決めていたのは喫茶とケーキの「トリアノン」。

マリー・アントワネットを連想させる、
たいそうな店名ながら、バロック建築とは無縁で
むしろハイカラな昭和の空気が漂う。
エンジ・マダム御用達の喫茶室は
北原三枝や浅丘ルリ子、はたまた笹森礼子が
小指を立ててカップを口元に運ぶ姿が似つかわしい。 

この日、マスクの携帯を忘れたJ.C.、
ウエイトレスに怪訝な顔をされながらも
通したのはブレンドコーヒーとサバラン。
1年前には予想もつかない体たらくは
1冊の雑誌がもたらしたコペルニクス的転回だ。

深煎りのブレンドが香り高い。
サバランはラム酒キツめのレモンも強めでなかなか。
「トリアノン」はここ高円寺が本店。
ほかに大久保の百人町、三鷹の下連雀に支店を構える。

小降りになった雨の中、
北口ロータリーから赤羽行きのバスに乗った。
これは予定の行動で目的地は北区・東十条。
東十条駅は同じJR京浜東北線が走る日暮里駅のように
西側が高台、東側は谷底という地形の境界にある。
海抜ゼロメートル地帯の谷底、東十条銀座を往復するも
これといった身の置き所が見つからない。

仕方なく向かった駅前の「杯一」は自粛休業中。
南口の「埼玉屋」、「新潟屋」も同じくだ。
すると、通りかかった裏道に小さな人の群れあり。
遠目にもかなりの密着度である。
「Let's BEER WORKS」なるクラフトビール製造所に
立ち飲みビヤスタンドが併設されていた。

実はJ.C.、クラフトビールはどちらかというと苦手。
重くてシツコくて、女なら別れる際に一悶着起こるタイプだ。
ところがスタッフと目が合ってしまい、
大きな声で呼び止められ、立ち飲み客が一斉に振り向く。
立ち去れなくなっちゃって立ち飲むことになった。

4種あるクラフトのうち、アースライト・ラガーと
アンバー・エールを1杯づついただいた。
周りの客と言葉を交わし始める。
談笑しながら飲むのは数十日ぶりだ。

常連客が連れて来たコーギーとも仲良くなり、
動物好きのオッサンには思いもよらぬシアワセなひととき。
楽しさのつれづれに、一首詠むといたしませう。

十条の東の端の醸造所われ立ち飲みて犬とたわむる

「Let's BEER WORKS」
 東京都北区東十条2-15-7
 電話ナシ
 土・日 13時~20時のみ営業