2020年5月19日火曜日

第2396話 ラーメンに 稲荷が浮かぶ 稲荷町

その日は台東区・蔵前で所用を済ませ、
散歩がてら上野に戻る道すがら、下谷神社に差し掛かった。
都内最古の稲荷神社には日本武尊が祀られている。

裏道を通ったので朱色も鮮やかな一の鳥居はくぐらず、
いきなり二の鳥居前に出ると、どうしてこんなところに? 
てな感じで1軒の仏料理店があった。
「ア・ラ・キエチュード」は手頃なプライス。
たまにはこんな昼めしもよかろうと、
ドアを引いたら何と、このご時世に満席ときた。

ちょくちょく出没するエリアだから機会はまた訪れる。
稲荷町交差点を北に渡ってすぐ、
さびれた日本そば屋の暖簾が風に揺れていた。
おっと、品書きに中華そばがあるじゃないか―。
そば屋の中華は意外にイケる。
たとえハズしても大ハズレの惨事には見舞われない。

13時過ぎで「秋月庵」の先客はゼロ。
ついでに後客も現れなかった。
初老の店主独りの仕切りだ。
5分で着卓した中華そば(500円)にはなぜか、
きざみねぎ&かまぼこの小皿が添えられる。
ねぎは判るが、かまぼこって何のおまじない?

どんぶりを飾る具材がまたユニーク。
豚肉、油揚げ、そしてここにも、かまぼこ現る、現る。
かまぼこだらけで客にしてみりゃボコボコにされてる気分だ。
ん? はは~ん、そういうことか―。
他の種物そばの流用というか、応用なんだネ。
豚肉は肉南蛮、油揚げはきつね、かまぼこはおかめ。
稲荷町だけにラーメンにも稲荷が浮かぶんだ。

記憶の糸をたどってみたら
ずいぶん前に油揚げが載ったラーメンを食べたが
どの町のどの店だったか、思い出せない。
まっ、揚げ玉を散らす、たぬきラーメンより
稲荷を浮かべる、きつねラーメンのほうがマシだよネ。

真っ黒なスープからいってみよう。
見た目は関東のかけづゆそのもの。
一口すすれば、そんなにしょっぱくないが旨味に薄い。
ラーメン屋のそれとは異なるものの、
そばつゆではなくラーメンスープであることは確かだ。

中太ちぢれ麺は特にコシがあるでもなく、ごく一般的。
小麦粉十割でそば粉は含まれていない。
ノビやすいタイプだろうが
量が量だからノビる間もなく食べ終わる。

訊きそびれた、かまぼこの理由を推測すると、
これはビール、日本酒への誘い水じゃなかろうか?
いずれにしろ、そば屋のつまみの代表格、
板わさの無料配布は
アホノマス・・・もとい、アベノマスクより、
よほど気が利いてるし、税金の無駄遣いとも無縁だ。
悪知恵ばかり働かせてないで
オメエもそろそろ正しい頭の使い方を覚えろってんだ。
えっ、シンゾさんヨ。

「秋月庵」
 東京都台東区東上野5-4-19
 03-3841-3211