2020年5月13日水曜日

第2392話 カニを食ったんだガニ (その2)

「さるかに合戦」は置いといて
「井泉本店」のカニとカッパのサラダである。
見た目も内容も変わり果てたが
じゃあ不味いのかと問われれば、これがいまだに美味い。
胡瓜のシャキシャキ感が歯に快感を呼ぶのだ。
でもねェ、さんざ食べた舌にはいささか味気無い。

クラシックラガーの中瓶に切り替えた。
タンブラーは即、返品して空いたジョッキにトクトク。
ジョッキの容量をチェックしてみようという気もあった。
すべては注ぎ切れず、瓶の残りから逆算すると、
およそ375ml といったところ。
中瓶が500ml で650円、中ジョッキは375ml で700円。
生はずいぶん割高なんだヨ。

軽めの昼飲みとはいえ、
「かっぱかに合戦」だけでは愛想がなさすぎる。
アナザー・フェイヴァリットに食指を動かす。
ところが意中の品がメニューから消えている。
これまた”来れば頼む”の、かにオムレツが見当たらない。
代わりというワケでもあるまいが、かに玉が載っていた。

厨房内の料理人に問い掛けると、
先輩に伺いを立てた末、かに入りオムレツできる由。
5分と待たずにプレートが整う。
美しい黄色の紡錘形に赤いケチャップ。
サイドには緑のパセリが一房。
いや、グッ・ルッキンだねェ。
人だけでなくオムレツもまた、見た目が八割なのだ。

一口、二口と食べ進み、あれっ、おかしいゾ。
玉子の具合はOKだが
箸で崩せども崩せども、突つけども突つけども、
かにが一向に姿を現わさない。
ヘイ、クラブ!ホエア・アー・ユー?
肝心カニメのかにを入れ忘れやがったな。

するってえと、紡錘形の真ん中あたりでようやく、
小指の先ほどのカケラがポロリ。
あまりの情けなさにJ.C.の目からは涙がポロリ。
かにの混入率はサラダを下回り、
以前の6分の1がいいところ。
かにオムレツに程遠くプレーンムレツだヨ、これは―

生中、中瓶、サラダ、オムレツで支払いは3400円。
かにの価格高騰は承知だから店に恨みはないけれど、
率直に心情を吐露すれば、
国破れて山河あり
オムレツ破れてカニがなし
カニしむ、もとい、かなしむべし

「井泉本店」
 東京都文京区湯島3-40-3
 03-3834-2901