2020年5月8日金曜日

第2389話 思い出すのは1971年 (その5)

高輪の高台にある喫茶店「キャロル」で
名物・焼きカレーをやっつけたところ。
ふくらんだ腹をさすりつつ、
カップにたっぷりのコーヒーを飲み干しても
まだ18時前である。

これでおいとまするが今夜はもう何も食えないなァ。
早いとこ帰ってビールを飲み直そう。
つまみは何も要らんなァ。
なんて思いながら会計をお願いしたそのとき、
目に飛び込んだのは壁の一筆だった。

読めば、何と当店は1971年の創業ときたもんだ。
数軒隣りの望楼が火の見櫓の役目を終えたその年に
オープしたのが「キャロル」だったというわけだ。
突如として店にも店主にも親近感、
いや、もはや愛着心だネ、ふつふつと湧いてきた。

何の因果か、この日は何から何まで1971年。
図らずも49年前へのタイムスリップを
思い切り楽しませてもらった。
だけど、こんな偶然があるんだねェ。

二本榎通りをなおも北へ歩む。
このまま行くと、ひと月前に上皇・上皇合両陛下が
移って来られた高輪皇族邸。
いや、現在は仙洞仮御所と名称変更されたハズ。
そこまであと数分の距離だ。

たとえ門前を横切っても
まさか、生麦事件の再来とはならんだろうが
ほろ酔い気分で通過するのはいかんせん畏れ多い。
従ってその手前、保安寺のところで通りをそれ、
右手の坂道を下っていった。

四十七士が眠る泉岳寺への近道だが、ほとんど迷路。
地元の人しか知らないルートなのだ。
5分ほどで山門前に出た。
門を閉ざす寺に一礼し、悪名高き高輪ゲートウェイへ。
JR山手線全30駅中、唯一のカタカナを持つ駅名。
どんな利権が絡んでいるのやら?
ヤだねェ、この国は―。

初めて新駅を利用してみたが
いやはや、駅本体も周辺も殺風景の極みなりけり。
駅舎なんか、北だか南だか空港のウイングさながらだ。
俺ら、こんなとこ通いたくねェだ!

TBSラジオの今は無き「荒川強啓デイ・キャッチ!」。
毎週水曜の時事川柳コーナーを思い出す。
リスナーの名作にこんなのがあった。

 ゲートウェイ? 四十七士が 迷うやろ

パチパチパチ!
おあとがよろしいようで―。

=おしまい=

「キャロル」
 東京都港区高輪2-6-20
 03-3449-4303