2020年5月26日火曜日

第2401話 またカニを食ったんだガニ (その4)

二子玉川駅で乗った電車は急行だった。
町全体が閉じていようとも桜新町で下車し、
サザエさん通りを歩きたかったが次の停車駅は三軒茶屋。
そこでは下車せず、好きでもない街、渋谷まで行った。

実はセンター街とは反対側の明治通り沿いに
心当たりの1軒があったのだ。
プラットフォームからコールする。
受話器を取った女性スタッフ曰く、
「ハイ、営業してますが17時までなんです」
初めて通る新開発された地下道を抜け、C2出口を上がり、
恵比寿方向へ歩いてほどなく「麺飯食堂 なかじま」に到着。

さっきの女性に消毒液の使用を促された。
そうして立った券売機前だが
カウンターとの間隔が狭いうえに
客たちの幹線通路になっており、おちおち択んでいられない。
まずは中瓶(570円)をポチり、何かつまみをと思ったものの、
そいつが見当たらず、目に入ったカニの文字に惑わされ、
勝手に指先が反応したカニレタス炒飯(850円)であった。

ビーールを買ったおかげか、活気ある店内でわりと寛げる、
カウンターの一番奥に案内された。
黒ラベルをノドに滑らせながら後悔の念につまづく自分がいる。
二子玉の「リヴィエール」では
少な目とはいえ、一応、ライスも食べた。
そのあとで炒飯なんか完食できるだろうか?

中瓶を飲み切る前に登場した炒飯の具はその名の通り、
カニとレタス、そして玉子のみ、それがドッサリである。
脇のスープは清湯の代わりに塩ベースのわかめスープ。
小ねぎと白胡麻が浮かび、
これはチャイニーズでなく、むしろコリアンだ。

しっとりと炒め上がったがったところを
散りレンゲですくってパクリ。
カニは粉々に砕けていてもそこそこの量が投入され、
甲殻類特有の風味も立ち上がって
ウン、これは確カニ、カニ炒飯だ!

それにしてもこのボリューム、他店の3割増しはあるゾ。
とにかく、挑んだ、頑張った。
学習しないからいつも頑張ってる。
そのくせ中瓶をもう1本、まったくビールは別腹なのだ。
額に汗してどうにか食べ終える、フゥ~ッ!

この環境下、しかもアイドルタイムに客足は衰えを見せない。
11―16時の半ライス無料サービスがグッドアイデアで
一律520円の多彩な単品料理を
オカズにすれば女性客に打ってつけ。
単品ならぬ単身女性が目立つのはこれの功績だろう。

店主のなかじまサンはじめ、スタッフによる、
ウェルカム&フェアウェルの挨拶にも好感が持てる。
くだんの女性スタッフなど退店の際に
先回りしてガラスのドアを引いてくれ、
「お気をつけて!」のひと言。
オヤジ殺しの振る舞いに心温まり、
思わず銀座「ウエスト」の看板娘を
まぶたに浮かべるJ.C.でありました。

=おしまい=

「麺飯食堂 なかじま」
 東京都渋谷区渋谷3-18-7
 03-5774-1601