2020年5月29日金曜日

第2404話 ミックスサンドとウインナー (その1)

このところ、よく出掛けているのは上野と浅草。
街にだいぶ人が出るようになったが
上野ではすでにアメ横界隈の酒場が
密集の密着に回帰したのに対して浅草はまだまだ寂しい。

この状況は浅草がインバウンドなくして
成り立たぬ街になったことを意味する。
仲見世が閉じていては日本人も観音様に詣でることはない。
ホッピー通りなんぞ、半数近くの店が
営業再開したものの閑古鳥が鳴いていた。

この日も台東区のコミュニティバス・めぐりんに乗ってエンコへ。
言問通りを北に渡り、しばらく無沙汰した観音裏を徘徊する。
かつて訪れたふぐ料理屋「M」はうなぎ屋に
天ぷら屋「Y」はそば屋に変わっている。
ひいきにしていたスナック「N」の跡に
イタリアンが開業していたのは衝撃的だった。

こまどり姉妹が

♪   なにも言うまい 言問橋の
  水に流した あの頃は  ♪

と、歌った言問橋で隅田川を越え、
墨田区・向島の喫茶店「HOLLY」に到着した。
先のオリンピックの年、雷門の並びに開業して56年目になる。
マスターは八十路も半ばに達し、マダムも同年輩、
以来、ずっとオシドリで切盛りしてきたという。

ここはいわゆる純喫茶につき、ビールがない。
ウインナー(400円)とミックスサンド(500円)をお願いした。
ウインナーは居酒屋なんかで出て来る、
赤いタコみたいなのではなく、ウインナーコーヒーのこと。
好みで生クリームを浮かべてくれるのだ。
手造りの生クリームはほのかに甘く、
クリーム&シュガーの役目を同時に果たしてチャージもナシ。
遠慮なくいただいた次第だ。

わが人生、コーヒーの空白期間があまりに長く、
しかもウインナーコーヒーとなると実に四半世紀ぶり。
最後に飲んだのはウイーンにあるホテル・ザッハーのカフェで
ホテル・オリジナルのデッカいザッハートルテに
往生しながら味わった。

ウインナーもさることながら、感心したのはミックスサンドだ。
下北沢の「トロワ・シャンブル」のように
パンは軽くトーストされていた。
フィリングが凝っており、繊切りキャベツ、ハムエッグ、
スライスきゅうりの順に重ねられている。

このハムエッグが何とも独創的。
想像するに四角いフライパンにオイルを熱し、
四角いハム1枚と溶き玉子を投入して
一種のオムレツを焼き上げる。
ハムは刻まないからハムピカタと呼ぶべきか?
とにかく初めて見るスタイルであった。

=つづく=