2020年8月21日金曜日

第2464話 鶯谷の坂の下 (その2)

鶯谷駅南口前の坂は東京23区の地図で見ると、
新坂なのだが「とん平」の箸袋には
”鶯谷坂下”と記されていたことを思い出した。
そりゃ、新坂よりも鶯谷坂のほうが雰囲気があるよネ。

梅雨の明けた八月初旬。
「とん平」に電話をすると、
すでに営業を再開しているとのこと。
数日後に訪れた。

はたしてヒレカツライスは・・・ 小さく丸っこいのが3個。
それぞれ3つ切りにされて計9片。
切り口はほろ酔い女の しどけない柔肌にも似てほんのり桃色。
真梨子ファンじゃなくとも思わず吐息をもらす。

初っ端の1片は両面ピンクの真ん中部分。
これに粗塩をパラリ振りかけてパクリ。
前回感じたコロモのガシガシとてなく、
豚肉とパン粉が羽衣をまとう天女のごとくに
やさしく口内を浮遊して デリカシーの極みだネ、これはー。
ロースとの違いが歴然。
いやはや裏を返してよかったヨ。

今回はこのクソ暑いのにとん汁を所望した。
赤身肉と玉ねぎ主体の具だくさんにして
三つ葉が浮かび、柚子の香りもうっすらと
とても上品な仕上がりだ。

店主と客のやりとりを聞いて判明したのは
四月からふた月ほど休んだとのこと。
子どもの保育園の関係で カミさん休ませるよりはと、
店を閉める決断に至った由。
食べ手にやさしいヒレカツを揚げる店主は
人柄もやさしいんだネ。

熱いお茶より冷たい水を好むJ.C.には
冷蔵庫からよく冷えたのを容器ごと出してくれた。
ちなみに店主は三代目。
創業者の初代が父親で母親が二代目。
変わらぬ味を守り続ける姿勢が見てとれた。

メニューは、海老フライ、季節のかきフライ、
生姜肉焼き、テッパン肉焼き、肉天と多くはないし、
つまみも、もずく、わかめ酢、おひたし、くさやと限定的。
しかし、このヒレカツさえあれば飯でも酒でもOKだ。

とんかつは嫌いじゃないけど、
お肉はそんなに食べられないし、脂っこいのは苦手。
そんな女性にはまさに打ってつけ、強く推したい。
Try it, you will like it !

「とん平」  
 東京都台東区根岸1-2-20  
 03-3873-5834