2021年3月2日火曜日

第2601話 日比谷の地下から 銀座の地下へ (その2)

日比谷シャンティ地下の「しまね館」をあとに

まだ腹五分目がいいとこにつき、即もう1軒イケる。

地上に出たら目の前の香港から上陸して来た、

飲茶ハウスに長蛇の列、強風下にご苦労なこってス。

 

あらためてシャンティを振り返る。

かつて此処には日比谷映画と有楽座、

ロードショー劇場が2館もあったのだ。

若き日のデートの定番、はて、何度訪れたことだろう。

 

それにしても風がヒドいや。

有楽町のガードをくぐり、

ビヤホール「ニュートーキョー」の前に出たところで

メトロ丸ノ内線の入口に吸い込まれ、

銀座ファイブの地下街に足を踏み入れた。

 

数寄屋橋とコリドー街を結ぶ地下通路には飲食店が並び、

はるか昔、リーマン時代はたびたびお世話になったが

それ以来、ホンの数回しか利用していない。

大風のおかげもあり、ここで遭ったが三年目、どこかに入ろう。

入ろうとは思ったものの、

なじみだった中国料理屋もとんかつ屋もすでにない。

 

結局は薬局、「タイ屋台料理 ティーヌン」に突入。

タイ娘と思しきウエイトレスに促されたテーブルに落ち着き、

あたりの様子をうかがうと、いやはや女性一色じゃないのっ!

長いこと入ってないが銭湯の女湯に迷い込んだ心持ち。

おそるおそる入口を振り返ったら、

レジはあっても番台がなかったので一安心の巻である。

そうだ、生春巻きでも食うとしよう。

 

さて、ビールの銘柄は・・・生も瓶も好みでニッコリ。

ニッコリはしたが何故か気まぐれ心につまづいた。

タイのビールが2種揃っていたのだ。

シンハ(ライオン)は重くてコクがあるため苦手。

チャーン()は軽めすっきりタイプで好き。

生春巻(ポピア・ソット)Sサイズとともに通した。

 

届いたチャーンをトクトクやり、

口元に運んだとき、卓上の団扇(うちわ)に目が留まる。

この寒いのに何で団扇なんか置いとくんだヨ。

客はいつもJ.C.みたいに温厚な性格の持ち主ばかりじゃないぜ。

アラを見つけちゃイチャモンつける、タチの悪いのもいるんだぜ。

トラブルの元じゃないのかえ?

世の人はコレをウチワもめと呼ぶんだヨ。

 

ん? 何だって・・・ プッ!

団扇の添え書きに思わず吹き出した。

「ご用の際は“すみませんうちわ”を

あげてスタッフを呼んでください」

ハハハ、笑っちゃうねェ、

ハイ、そういたしマスです。

 

=つづく=