2021年3月30日火曜日

第2621話 ザ・ウーマン・フロム・GZ (その2)

大田区・大森の「煮込 蔦八」を訪れたのは2017年の初夏。

当時は本店のみだったが現在は向かいに「はなれ」、

駅そばには焼き鳥に特化した3号店と勢力を延ばしている。

ビールはじゅうぶん飲んだから白鹿を熱めにつけてもらう。

 

つまみは煮込みの小サイズとまぐろ脳天刺し。

モツが苦手な相方は豆腐ばかりを口元に運んでいる。

まぐろ脳天の身肉自体はいいが、あまりにも筋っぽい。

 

麒麟山の冷たいのに切り替えた。

スッキリとした味わいが好みだ。

御徒町のマイ・ブレイクルーム「味の笛」でも

よく飲むのは麒麟山と越乃寒梅、冷酒は越後がシックリくる。

 

「何かほかに好きなモン頼みなヨ」

「ニンニクの丸揚げ」

耳を疑いやしたネ。

再度訊ねても応えは変わらない。

「そんなの食って、あとでキスなんかするとき、

 塩梅悪いだろうが―」

「一緒に食べればいいじゃない」

仕方なく通してやった。

 

すると奴サン、食いやした。

J.C.も1粒だけつまんだけど残り全部、

赤ん坊の拳(こぶし)くらいあるヤツを完食しやがった。

 

あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥(ほととぎす)

先人に倣えば

その面(つら)で丸揚げ食らうか銀座ママ

てな感じ。

いや、ニンニクは好きだが丸揚げは注文したことないな。

 

麒麟山のお替わりをして3軒目に移動。

実は此処こそが今回、大森に連れ出した理由であった。

2分歩いてやって来たのは山王小路飲食店街。

通称、地獄谷である。

 

クラブの世界の頂点は銀座だろうが

スナックならば、こんな世界もあるんだぜ。

そこんところをぜひ、見せてやりたかったのだ。

 

八十路に差し掛かったママが独りで切盛りする、

「T」の店先に立つ。

ありゃあ、「T」がなくなってるヨ。

いや、物件は残っちゃいても店の名が「M」に変わってる。

 

この間の事情を知るためにも、そのまま「M」に入店した。

ところが祝日の土曜とあって本来のママの姿なく、

臨時の助っ人ママでは詳しいことが判らずじまい。

健在ではあるらしいと聞いて一安心の巻。

 

相方がハイボール2杯、当方は小瓶2本。

互いに1曲づつ歌い、

20時の閉店と同時にお開きとして帰宅の途に着いた。

 

ちなみに当夜、

くちづけが交わされることはございませんでした。

その気持ちすら、起こりませんでした。

 

「煮込 蔦八はなれ」

 東京都大田区大森北1-38-1

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