2021年5月11日火曜日

第2651話 まぐ茶を見下ろす 時計塔

数日前に訪れた銀座だが

悪天候で地下に潜りっぱなしだったから仕切り直し。

晴海通りと銀座通りがクロスする、

4丁目交差点にやって来た。

昔は尾張町の交差点と呼ばれた銀座のど真ん中だ。

 

うなぎの老舗「竹葉亭 銀座店」が営業している。

ピカッとひらめくものあって6年ぶりに暖簾をくぐった。

「一人なんですが・・・」

「お二階で靴を脱いでいただいてもよろしいですか?」

「ええ、いいですヨ」

 

窓際に3卓あるうち、真ん中が空いていた。

4丁目の交差点を見下ろす特等席である。

緑茶を運んでくれた女性にさっきひらめいた、

まぐ茶(まぐろ茶漬け)をお願いした。

当店で酒を飲まないのは初めてだけれど、

おチャケがなけりゃ、お茶漬けがあるサ。

 

むろん此処のうなぎに文句などない。

ただ、それ以上の気に入りが

真鯛かぶとの塩焼きor煮つけ、そして鯛茶orまぐ茶。

酒が無いならつまみは要らない、速攻で茶漬けである。

 

「竹葉亭」といえば、思い出すのは建て替え前の丸ビル店。

大正ロマンと昭和レトロが見事に調和しており、

身を置くだけで幸福な、あの空間が懐かしい。

35年前はマレーシアのクアラルンプール店も訪れた。

 

「お待たせしました。

お茶漬け用のお茶をお持ちしてよろしいですか?」

「お願いします」

 

胡麻だれの絡むまぐろはインドかバチだろうが

良質にして量もたっぷり。

吟味された、しば漬け2種、たくあんが添えられる。

おひつ入りのごはんは茶碗に軽く2杯分ほど。

 

まぐ茶を頼んでおきながら、ほとんど茶漬けにはしない。

刺身定食の要領で4分の3を食べ、

最後のクォーターを茶漬けで味わう。

社会人になって以来、この食べ方を通している。

ちなみにお茶はほうじ茶だ。

 

和光の時計塔が控えめに13時の時報を告げた。

行き交う人の群ればかりに気を取られ、

交差点を見下ろしていたが

実は時計塔にまぐ茶を食う姿を見下ろされていたんだ。

不作法はしないからかまわないけどネ。

 

お勘定は1980円也。

銀座のランドマークを見上げながらいただく

飛び切りの昼食がこの値段だ。

1年前にはインバウンド絶えて静けさ戻った銀座の街。

わが胸に恋人が帰ったかのようなシアワセを感じた。

 

「竹葉亭 銀座店」

 東京都中央区銀座5-8-3

 03-3571-0677