2021年5月25日火曜日

第2661話 もちは餅屋 うなぎは鰻屋

この日の昼めしは遠出せずに済ませるつもり。

だとしても未訪の店がいいな。

出向いたのは団子坂近くの「鳥安」。

イートイン店舗を併設する鶏肉専門店は

片手間にうなぎも取り扱う。

いや、片手間は失礼だネ。

何度も鶏肉を買ったが食事はしていない。

 

 13時を過ぎても席の半数は埋まっている。

その後も客足が途絶えることはなかった。

昼の主要な献立は三択。

うな重(1630)

焼き鳥重 からあげ定食(770)

うなぎをトライした。

レギュラーメニューのうな重は

(竹)(松)(特)の3種で24503060円。

 

すでに焼き置かれた蒲焼きを温めるだけなので

配膳はいたってスピーディー。

重箱には上(カミ)に加え、下(シモ)はハーフ。

四分の三身が横たわっていた。

 

シモから箸をつけるも特有の力強さが感じられず、

うなぎを食している気がしない。

粉山椒を振ってはみたものの、これもパンチ不足。

重箱の隅までびっしり詰まった白飯をどうすっかなァ。

 

主役の不調をカバーしたのが脇役陣だった。

温泉玉子は黄身の固まり具合よろしく、

きゅうり・かぶ・大根・白菜の新香も

浅い漬かりでまことにけっこう。

肝吸いならぬ、味噌椀はじゃが芋&わかめだ。

 

うなぎ屋で芋かよぉ、ダッセエなァ。

なんて野暮は言いっこなし。

すると思いのほか、じゃが芋が旨いんでやんの。

拍子木に切られたのがいっぱい入ってた。

とにもかくにもうな重をいただいて

二千円でオツリだから、けして文句は言えない。

 

とは言え、お冷や代わりの冷たい緑茶を飲みながら思う。

うなぎはやはり心と時間に余裕を持って

ゆっくりじっくり鰻屋で味わいたいもの。

われわれ庶民には多少の背伸びが必要な食べものなのだ。

 

もちは餅屋の言葉を残した先達に倣えば、

とりは鳥屋、うなぎは鰻屋。

「鳥安」は鶏肉専門店だから

焼き鳥重を通すのが筋であった。

 

「鳥安」

 東京都文京区千駄木2-13-1

 03-3821-1301