2022年11月10日木曜日

第3143話 アクリル板の向こうとこっち (その1)

てなこって片肺飛行をするため、
エンコの街にやって来た。
いつもは昼食後の2軒目として利用する、
「神谷バー」にこの日は直行し、
1階の食券売り場へ。

当店の箸袋にはこうある。
1階 神谷バー 2階 レストラン 3階 割烹
以前は十中八九、いや、百中九十八九十九、
2階だったが最近は1階のほうが多い。
料理を注文する必要がないからだ。

ドライの大瓶(800円)と
馬刺し(950円)のチケットを購入。
卓上に馬刺しの写真がある。
口の中で溶ける脂の旨味をご賞味ください
ご賞味しましょう。
オニオンスライスの上にやや厚めの四角いのが10切れ。
確かに霜降りが舌に溶け、合格ラインに達している。

追加注文はウエイターに現金を預け、
チケットを買ってもららう。
電氣ブラン<オールド>(400円)、
ハチブドー酒・赤 (500円)
串かつ (500円)
以上3点をお願いした。

J.C.が位置する卓は横長の8人掛け。
アクリル板3枚で2・2・2・2に仕切られ、
バーを背にして右から2番目の2だ。
一番右側の2にオジさん着席。
はす向かいのポジションとなる。

見るともなしに眼に入る光景。
オジさんがウエイターに何か言ってるぜ。
ほどなくドライの大瓶とデンキブランが運ばれた。
ハハ~ン、察するに
J.C.の瓶ビールを目にしたオジさんが
生から瓶に差し替えを頼んだんだ。

「神谷バー」で瓶ビールは50人中、
いや100人中1人いるか、いないかだろう。
知る限り、3~4度見かけた地元の紳士一人だけ。
ふ~む、ずいぶん変わった御仁と半相席になった。
そういう自分もかなり珍しいけどネ。

ややっ! 見覚えのある皿が着卓したぜ。
オジさん、馬刺しも頼んだんだ。
どんだけ人の真似をする気なんだい?
でも彼が来たとき、
こっちの馬刺しは完食済みだったがなァ。

=つづく=