2023年6月13日火曜日

第3295話  奈良漬に つい誘われて

そうこうするうち、時刻は14時に近づいた。
ルミエール商店街から裏道の「しげきん」へ。
父親と娘の切盛りに早くも先客が1名。

ドライの中ジョッキを2杯即注したいところだが
渇きを訴えているようで
みっともないから思いとどまる。
それでも1杯目の着卓と同時に
お替わりを通していた。

毎度のことながら生き返りやした。
品書きボードを見上げ、スズキ昆布〆をお願い。
”鈴木クン”は死後硬直が完全に解け、
弾力が失われているものの悪くはない。

先刻のミートソースのスパゲッティが
少なめだったせいもあり、まだ何かいけそうだ。
3杯目とともにかき揚げを所望。 
ほお~、包丁を握る父親ではなく、
お運び兼洗い場担当の娘が種を揚げ油に落とした。

だいじょうぶかな?  心配無用であった。
きちんと揚がって出て来た。
ほとんど玉ねぎ、あとにんじん。
厚みはなくともかなりのサイズ。
バカでかいというより、
だだっ広いというのが当たっている。

パートだろうか?
オバちゃんが二人出勤して来た。
いや、一人は店主の妻にして
娘の母かもしれないな。

かき揚げを食べ終える頃、
娘がにっこり笑って
「よろしかったらどうぞ!」ー
差し出した小皿には奈良漬が2切れ。
「おう、これはありがたいネ」
奈良漬は好きなんだ。

生ビール3杯で切り上げるつもりが
奈良漬につい誘われた。
「冷酒の銘柄は何かな?」
娘、振り向いて応える。
「日本盛ですが・・・」
「じゃ、奥の方でよく冷えてるヤツ1本」
「はァい、判りましたァ」

おっ、ずいぶん辛口だな。
300mlのボトルを確かめたら
しっかり”辛口”と明記されておった。
合いの手が甘い奈良漬だから余計に辛く感じる。

「やっぱりお酒、お好きなんですネ」
「いや、そうでもないけど、
 奈良漬につい誘われちゃったヨ」
「アハッ!」
「商売が上手だこと」
「アハハハ!」

どこまでも平和な新小岩の昼下がり。
店のそばには平和橋通りが走っております。

「しげきん」
 東京都葛飾区新小岩1-30-8
 03-5662-8536