2023年6月15日木曜日

第3297話 麻布の海南鶏飯(その1)

上野御徒町から都営大江戸線を
グルッと回って麻布十番。
20年ほど前に大江戸線とメトロ南北線が
相次いで開通する前は陸の孤島と揶揄されていた。
今でも六本木の谷底のままだが
J.C.はこの街が好き、六本木よりずっと。

目抜き通りをほぼ抜けて
地番が麻布から六本木に代わる。
此処に古くからある「海南鶏飯食堂」へ。
地下鉄の開通当初だったから
20年ぶりくらいになる。

清々しいテラス席はカップル専用。
単身客やグループは薄暗い店内へ、
着卓してメニューを手に取ると、
暗くて文字が読めないヨ。

メニューを手に立ち上がったら接客の女性。
「どうかなさいましたか?」
「いや、暗すぎて見えないんだ」
「アッ、どうもすみません」
「いいの、いいの、最近目がかすむんだ」
「大変ですネ」

テラスの順番待ち用椅子に腰掛け、
シンガポールの国民食、
海南鶏飯(ハイナンジーファン)にする。
メニューをチェックするまでもなかったが
一応、ココナッツチキン・カレーと迷ったんだ。

でも、ここのところカレー続きだったもんで
「黙って読んでりゃ調子に乗りやがって
 いい加減にせい!」ー
そんな読者の声が聞こえて取りやめ。

ビールは生がキリン、瓶はタイガー。
懐かしのタイガーの小瓶を。
シンガポールの二大ビールメーカー、
タイガーはよく見るが
アンカーに出逢うことはまずない。
それが不思議。
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東南アジア諸国のビールはいずれも
口当たりさわやかにしてノド越しもスッキリ。
あんな暑い所で重たいタイプは飲めやしないヨ。
久しぶりに飲むタイガーは快適だった。

運ばれたプレートはハッとするほどに美しい。
炒飯のように丸いカタチのインディカ米。
その脇にはこんもりと香菜(パクチー)。

そして3種のソースは
オレンジ色のチリ、
オフ・ホワイトのジンジャー、
チョコレート色のダーク。
絵の具のパレットのように色鮮やか。
このダークソースには思い出が深いのだ。

=つづく=