2023年6月16日金曜日

第3298話 麻布の海南鶏飯(その2)

J.C.がシンガポールに暮らしたのは
1983年4月から’87年2月。
その間、幾度ハイナネーズ・チキンライスを
食したことだろう。

そう、中国のたまり醤油を用いる、
ダークソースのことであった。
赴任中はほぼずっと、
このソースをダックソースと信じて疑わなかった。

何だってまたチキンのソースが
ダック(アヒル)なんだヨと、
不思議でならなかった。
これがダークと知ったのはNYに移る寸前のこと。

何でこうなるの?
すべてはシングリッシュの成せる業であった
彼らの発音は音楽用語でいう、
スタッカートが強烈過ぎる。

例えば、He told me.
これが連中にかかると、
ヒッ トッ ニッ と来たもんだ。
ダークがダックと聞こえるのも致し方なし。
てなワケでした。

あっさりとしていながら
旨みじゅうぶんのチキンスープが
胃の腑に染み渡る。

しっとりと柔らかく蒸された鶏ムネ肉を
まずジンジャーソースでー。
うん、いいねェ、旨いなァ。

最近は都内のシンガポール・レストランで
盛んに揚げバージョンを見受けるが
昔はあんなの無かった。
言わせて貰えば邪道の極みで
揚げチキはケンタに任せとけっての!

隣りに初老の夫婦が着卓。
見るからに近隣の裕福な人たちだ。
ご婦人が殿方に
「うわァ、何でビールがこんなに高いの?」
ドキッとしたJ.C.、2本目をガマンする。

それにしてもこの暗い店内で
細かい字を読めたもんだな。
年恰好はJ.C.とあまり変わらんぜ。

接客女性が勧めるライスのお替わりを辞退し、
美味しく食べ終えてのお勘定は1990円也。
鶏飯1000円に対して小瓶が990円だとサ。
こりゃあ、高いや。
隣りのご婦人には
もっと早く言ってほしかった。

「海南鶏飯食堂 麻布本店」
 東京都港区六本木6-11-16
 03-5474-3200