2024年3月22日金曜日

第3498話 浅草橋から 浅草へ流れて (その2)

しばらく大阪には行っていないが
法善寺横丁の思い出は門前のおでん屋「おかめ」。
大阪を訪れるたびに足が向いてしまう。
浪花のおでんの第一感は此の店である。

壁の品書きを見上げてはいつもニヤリ。
凝った当て字につい頬がゆるむ。

美以留(ビール) 毛露九(もろきゅう)
図呂郎(とろろ) 多幸巣(たこす)
夜ッ子(やっこ) 女差(めざし)

といった塩梅なのだ。

それはそれとして、浅草橋の「藤芳」。
炒めた玉ねぎをたっぷり乗せた、
ポークソテーを味わい、卓上にあった、
自家製のおかか&白胡麻のふりかけを
つまんだりもしながら中瓶1本で切り上げた。

浅草橋をあとに鳥越神社を抜け、
昭和の情緒を残す新堀通りを北上。
かっぱ橋道具街をかっぱ橋本通りで右折し、
浅草六区にやって来た。

久方ぶりに入店したのは「水口食堂」。
料理はあまり感心しないが
エンコには数少ない食堂で雰囲気も好い。
飲みつけのドライ大瓶を所望すると
お通しは珍しくも焼きかつおが運ばれた。

つまみはタルタルソースにポテサラと
キャベツを従えた4カンのかきフライ。
ん? 広島産かな? コロモが厚くガシガシ。
言わんこっちゃないぜ、
どうもこの店にはイマイチ感がつきまとう。

唯一の逃げ道、下町特有の一品、
炒り豚に逃げればよかったものをー。
炒り豚は豚肉(バラだったり小間だったり)と
玉ねぎを炒めたシンプル極まりない代物だ。
押しなべて塩味とケチャップ味に二分される。
だけどポークソテーのあとに炒り豚はないやろ。

菊正生貯蔵酒 生酛(きもと)300mlに移行。
店内に浅草らしい穏やかな空気が流れている。
冷酒片手にピープル・ウォッチングと参ろう。
若者、中年、初老、カップルがやたらに多い。
偶然かも知れないけれど
外国人が1組も居ないのがどことなく新鮮。

東京でピープル・ウォッチングに最適なのは
一に浅草、二に銀座、三、四がなくて
五に神楽坂でキマリだろう。
まっ、勝手なキメだけどネ。
エニウェイ、浅草の夜は静かに更けてゆきました。

「藤芳 駅前店」 
 東京都台東区浅草橋1-11-4
 03-3865-2144

「水口食堂」
 東京都台東区浅草2-4-9
 03-3844-2725