2024年3月7日木曜日

第8487話 壺のタレ 守り続けて 120年 (その1)

明治通りと白山通りの交差点近く。
大正大学・巣鴨キャンパスの向かいあたりに
「柳下」なる古い赤ちょうちんあり。
八十路の女将一人が切盛りしており、
焼きとんがウリの店だ。

神保町で映画を観たあと、
都営三田線で1本、西巣鴨で降りた。
駅から徒歩1分、暖簾を静かにくぐる。
まだ開店直後の17時過ぎ、先客は誰も居ない。

L字のカウンターに着いて
ドライの大瓶をお願いし、
シロとレバをタレで焼いてもらう。
当店は2本しばりである。

塩でも頼めるが女将は強くタレを奨める。
何せ、屋台で開業して以来、
120年の長きに渡り、
守り続けたタレが震災&戦災を乗り越え、
時代物の壺に納まっているからネ。
コイツはスゲェや。

大瓶をもう1本に今度はカシラを塩。
それと青森産ニンニクを追加した。
ニンニクは焼くのではなく、
チンして味噌を添えて供される。

後客二人組が来店。
ビールと焼きとんのほかに
オイルサーディンを発注。
これは缶詰を開けたその上に
大量の玉ねぎのみじん切りを乗せ、
直火のガスに掛けられた。

てっきりイタリアかスペイン産と思いきや、
驚くなかれ、国産の、しかもあの天橋立で
製造・販売されているものである。
これには苺ミルクの日本酒(前話参照)と
同じくらいにビックラこいた。

日本三景の一翼を担う天橋立で
イワシの缶詰とはねェ。
どうして試さずにおらりょうか。
でも1人で1缶はキツい。
翌週、イワシのためだけに出直した。
ちゃあんと予習をした上でネ。

このオイルサーディンは
京都府宮津市は竹中罐詰の商品。
天橋立オイルサーディン いわし油漬け
その名称で売られている。
使用される油は一般的なオリーブ油ではなく、
綿実油(コットンシード・オイル)なのだ。

=つづく=