2024年3月26日火曜日

第3500話 水門通りを歩き多摩川 (その1)

十数年ぶりで京急・雑色駅に降り立った。
東京の南のはずれまで遠征したのには
理由(わけ)があった。
多摩川を臨む六郷水門を見たかったのだ。

駅前を走る第二京浜国道を渡ると
そこは水門へと続く水門通り。
フランク永井の「夜霧の第二国道」が
ふと脳裏を掠めたが真っ昼間なのでやめとく。
浪花の小姑もうるさいことだしネ。

そう言えば先週、「月の法善寺横町」を
せっかく紹介したのに小姑のヤツ、
知らねェと来たもんだ。
大阪府民の風上にも置けないヤツだぜ。

水門通り商店街は
店舗の数を減らしたようだが
それでもそれなりの活気があった。
ただし、飲食店はかなり少ない。
ちょいと横道にそれたところに1軒だけ、
順番待ちが数人たむろする町中華があった。
水門を見たあとで此処に寄ろうかな?

六郷水門に到着。
この水門は六郷用水の多摩川への排出と
多摩川の氾濫による浸水を防ぐ目的で
昭和6年に着工、翌7年に完成している。
令和3年には
土木学会選奨土木遺産に選定された。

金森式鉄筋煉瓦という工法が取られ、
その堅牢さは竣工から90年を経過した今も
現役の水門として活躍している。
なるほど立派な姿にしばし見とれた。

前方には多摩川の流れ。
左手に産業道路の大師橋と高速大師橋が
並んで走っているのが見える。
その向こうは羽田空港だ。

小学生時代、大田区の生徒だったJ.C.は
社会科の授業で多摩川の最下流は
六郷川とも呼ばれると習った。
六郷川を眺めていると
子どもの頃に還ったような気がしてきた。
還暦なんざとっくに過ぎてるのにネ。

水門の内側の船溜まりに
1羽のコサギが羽を休めていた。
純白の姿が光の中でまぶしい。

サギという鳥は帰るねぐらは別として
サカナを獲るときはけして群れない。
掛け子だ、出し子だと、群れになって
サギを働くのは人間だけなのだ。
げにあさましい生き物よのお。

=つづく=