2024年6月10日月曜日

第3554話 気ままに京都 一人旅 (その1)

久方ぶりに京都へ気ままな一人旅。
宿は浄土真宗本願寺派の本山、西本願寺の隣り。
近いので京都駅から15分歩き、
チェックイン後、すぐに出掛けた。

この街は歩いてなんぼ。
歩かなければ魅力が身体に沁み込まない。
不健脚が来る場所ではないのだ。
五条通りを東に向かい、五条大橋。
まずは西詰の石像を拝む。

子どもの頃から牛若丸が大好きなJ.C.。
弁慶との相対図を眺めるのが
京都での慣習となっている。
漫画チックにデフォルメされてユーモラス。

橋は渡らず、鴨川の右岸沿い、
木屋町通りを北上してほどなく、
松原通りに差し掛かった。
かつての五条大路であり、
鴨川に架かる橋は五条松原橋と呼ばれ、
牛若vs弁慶の一騎打ちはこの橋上で競われた。
といっても作り話じゃ、どちらでも同じこと。

遅めの昼めしを軽く取ろうと到着した、
花見小路の一口餃子店は中休みの最中。
おかしいな、通し営業のハズなのにな。
昼は省略して、晩酌に切り替えちまおう。

17時過ぎにやって来たのは錦市場に近い、
富小路(とみのこうじ)のレトロな四富会館。
京都にはいくつか ”会館” と称する、
奇妙な建築物が存在し、一種の雑居スペース。
此処もその一つで代表格といえる。

一番奥のカジュアル割烹「てしま」に入店。
ワンオペの店主はかつて鮨職人で
瀬戸内海の豊島(てしま)出身である。
黒ラベル大瓶をお願いし、
品書きにぐじ一汐を見とめて訊ねた。
「頭(カシラ)付きありますか?」
「あります、あります」
京都ではイの一番に甘鯛である。

焼き上がるまで鯖寿し2カンと
菜っぱ(若い白菜)の炊いたんが麦酒の友。
京都のさばずしは大阪のバッテラと異なり、
厚い松前昆布を外してから食べるが
当店は白板昆布、いわゆるバッテラ昆布付き。
こちらが好みにつき、握った箸に力が入る。

京揚げと合わせた菜っぱも京都らしい一品だ。
カシラ付き赤甘鯛を美味しくいただき、
大瓶2本で切り上げ、お勘定は3300円也。

先斗町に流れ、狙い定めた割烹を訊ねるも
予約でいっぱい。
向かいに「すずめ」という居酒屋あり。
行き場を無くしたはぐれ雀にはもってこい。
引き戸を引きました。

=つづく=

「てしま」
 京都府京都市中京区富小路四条上ル四富会館
 050-5456-6548