2024年6月26日水曜日

第3566話 肌の合わない 吉祥寺

西荻の「鞍馬」をあとにして歩き始めたとき、
悪魔のささやきが聞こえた。
(これから何処へ行くんだい?
 吉祥寺はすぐそこだぜ!)
このことであった。

実はJ.C.、西荻は大好きなんだが
隣りの吉祥寺は大の苦手。
昔から肌が合わないのである。
よってなるべく避けてきたが
最後に訪れたのは一体、いつのことだろう。

帰宅後、調べてみた。
2001年5月にイタリアンの「iL CHIANTI」で
晩めしを食べている。
先刻の「鞍馬」の半年前で同じ年。
奇遇と云えば奇遇だ。

当時の部下のR恵チャンと一緒だった。
彼女はJR中央線の立川より先に棲んでおり、
通勤に片道1時間半は要したハズ。

「オカザワさんとの食事は
 お酒もけっこう入っちゃうんで
 会社のそばだと帰りがキビシいんです」
「うん判った、じゃ帰りやすいとこにしよう。
 新宿とか、中野とか?」
「吉祥寺はいかがですか?」
「ええ~っ! 吉祥寺かい? 
 そりゃまたずいぶん・・・」
「オカザワさんの好きな西荻の1コ先ですヨ、
 ダメですか?」
「いいヨ、ハイ、ハイ、吉祥寺ネ?」

昔から部下にはやさしいのである。
あれから23年かァ!
いくら肌が合わないとはいえ、
かくも長き無沙汰とは思わなんだ。

てなこってこの日は決断し、ひと駅歩いた。
駅前のハモニカ横丁ならどこか開いてるだろう。
選択肢は5軒ほどあったが
脚を止めたのは愛想の好い娘のワン・オペ、
スタンド・ワインバーである。
ただし、ビールがないんでやんの。

カリフォルニアのピノ・ノワール、
アデュレーション'22 を所望した。
1グラス千円である。
先客のオジさん2人としばし談笑していたら
パラパラと客が出没、少々混んできた。

井の頭公園にでも行ってみようかな?
もう1杯お替りし、駅前に来ると
板橋区・成増町行きのバスが停まっている。
おっと、石神井公園経由じゃないか、
ええい、乗っちゃえ。
この街はやっぱ、長居するとこじゃないや。
あばよ、吉之助、発車オーライ!

「立ち呑み ばっかす」
 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-8
 電話:ナシ