2024年6月25日火曜日

第3565話 「鞍馬」の〆鯖に 惚れ込む

JR中央線沿線で一番好きな町は西荻窪。
おっとりとした表情が気に入っている。
この町きっての日本そば屋、
「鞍馬」のことを不図、思い出した。
先日、京都の地下鉄を鞍馬口で降りたせいかな?

訪ねてみた。
2001年11月以来だから半世紀に成らんとする。
あのときも独りだった。
ドライを飲み、お通しのそば揚げをつまみ、
品書きをつぶさにチェックする。

ん? 伊豆わさびのかえし漬け?
眼(まなこ)を射抜かれた。
葉わさびだろうか? 花わさびかもしれない。
お運びのオネエさんに訊ねると
「茎とか葉っぱとか入ってるんですが・・・」
「フフ、じゃ、それお願い」

何のこたあない、わさび本体から
チョコチョコっと生え出る茎を
そばつゆのかえしに漬け込んだものだった。
お味はけっこうなれど、ヤケにしょっぱい。

大量に生わさびを消費するわが家では
この茎を生醤油と清酒の同割りに漬け込む。
よってまろやかな味わいとなる。
板場に教えてやろうかな、いや、やめとこう。

〆鯖を追加した。
京都ではさんざ鯖寿司を食べたが
〆鯖は食べていない。
彼の地ではきずしと呼ぶ。
おそらく生寿司のことだろう。

これが素晴らしかった。
下手な割烹や鮨屋の上をゆく。
いやはや、惚れ込んじゃいました。

「鞍馬」はそばにも鯖にも本わさび。
しかしながら絶対量が少ない上に
おろし置きのため、ヘタッてしまっている。
そこんところが何とも残念。

中瓶のお替わりとともに
箱盛りそばと呼ばれるせいろをー。
さすがに西荻の誇る名店、
そばもつゆもキリリと締まってスキがない。
そば湯をいただき、お勘定は3650円也。

せっかく杉並区のはずれまで遠征したのだ。
このまま都心に引き返すわけには参らん。
このとき耳朶の奥で悪魔がささやいたのでした。

「鞍馬」
 東京都杉並区西荻南3-10-1
 03-3333-6351