2024年12月4日水曜日

第3681話 タバギンで 予期せぬ当たり 「都鳥」

この日は北区のタバギン(田端銀座)へ。
うなぎと焼き鳥の「都鳥」は
マークしていたが初めての訪れである。

13時前に暖簾をくぐると先客はゼロ。
「いらっしゃいませ~」
迎えてくれたオニジさんの白衣の汚れが
目について少々気になった。

日曜日で休みなのか
女性スタッフがいないため、
おそらく厨房の彼が
接客に出て来たものと思われた。
よって大目に見ることにしよう。

うなぎ屋では最小サイズを択ぶのが常。
そこに肝焼きを1本プラスするのだ。
うな丼(1850円)と肝焼き(350円)を通す。
ビールはキリンラガーの中瓶のみ。
頼まざるを得ない。

「ごはんにはタレをかけないで下さい」ー
いつもそうお願いするが初めての店では
どんな状態で出て来るのか判らないし、
デフォの姿を拝む意味合いもあり、
あえて指示しない。

15分ほどで肝焼きが運ばれた。
8尾分くらいあろうか?
みっしりと串打ちされ、ふくら雀状態。
こいつは食べ出があるゾ、粉山椒を振る。
焼き上がりも味も、まことにけっこう。
うな丼に乗せるため、1/3ほどを残す。

10分遅れてうな丼が調う。
再び粉山椒を振り、口元へ運ぶ。
これまた想像以上の出来映えにニンマリ。
ただし、タレの分量は多過ぎた。
香の物はきゅうりぬか漬け&キャベツもみ。
そして歯応えがとても好いたくあん。
この店は当たりである。

お勘定は2750円。
帳場に店主らしきオジイさんが現れた。
この御仁を見ただけで店の年季が判る。
次回はうなぎ好きのニューめしとも、
S蘭を連れて来よう。

帰りにタバギンのおでん種屋「佃忠」で
晩酌用に何か買おうとしたが
あにはからんや定休日。
砂町銀座に本店のある鮮魚店、
「魚壮」に迂回したのでした。

「都鳥」
 東京都北区田端3-7-6
 03-3821-0205

2024年12月3日火曜日

第3680話 荷風が愛した 紅燈街

神保町シアターにおける、
「映画に生きるー田中絹代」もいよいよ大詰め。
この日は永井荷風による三つの短篇、
「春情鳩の街」「にぎりめし」
「渡り鳥いつかへる」を原作とした映画、
「渡り鳥いつ帰る」(1955)。

上手いことまとめ上げたのは久保田万太郎。
監督が「警察日記」の久松静児。
今世紀初頭に一度だけ観た記憶が残っており、
前回の「流れる」に負けず劣らず好きな作品だ。

舞台は玉の井(東向島)と
向島の中間に位置する鳩の街。
荷風が愛した紅燈街でも比較的新しい。
戦災で焼け出された玉の井の業者が
移転して開いた新興カフェー街が此処。

敗戦の年、昭和20年5月に数軒がオープンし、
8月には数十軒に膨れ上がっていた。
いつB29の爆撃を受けるか判らぬ空の下で
いったいどんな人種がエッセエッセと
性なる行為に励んだのだろう。
明日死ぬかもしれないならヤることは一つか。

それはそれとして「渡り鳥いつ帰る」は
「流れる」同様に女優陣が豪華。
田中絹代を始め、淡路恵子・久慈あさみ・
岡田茉莉子・高峰秀子・桂木洋子。

「流れる」との大きな違いは
男優たちの存在が重要で
田中とともに娼館を営む亭主が森繁久彌。
あとは脇役陣ながら
左卜全・中村是好・藤原釜足など。

笑えるのは原作者の永井荷風。
昭和24年、浅草のストリップ劇場、
「ロック座」で「渡り鳥いつかへる」が
寸劇として上演された。

すると本人が「僕も出よう!」と舞台に上がる。
こんな感じであった。

舞台の中央におでんの屋台がある。
上手から出て来た荷風先生は
屋台のおやじに声を掛ける。
「おじさん、忙しい?」
「おや、産婦人科の永井先生じゃござんせんか?
 まあ、お休みになってお一つ」
「や、ありがとう、一杯いただくか」
そこへ赤い洋装の若い女が通りかかる。
「あんた、なかなか可愛いネ、
 そこまで一緒に帰ろう」
手を組んで去ってゆく。
観客はもちろん、楽屋裏も拍手喝采だった。

「渡り鳥いつ帰る」は今日(火)の正午、
明日(水)夜、明後日(木)夕方、
その翌日(金)午後と4回の上映を残している。

7日(土)からは新シリーズ、
「マキノ雅弘の時代劇傑作選」が始まる。
皮切りはあのバンツマの華麗なる立ち回り、
「決闘高田の馬場」
(「血煙高田の馬場」改題短縮版)であります。

2024年12月2日月曜日

第3679話 来るたびに 店が消えゆく 不動前 (その2)

穴子天せいろのあと、腹ごなしの散歩。
参道に天台宗安養院が門を構えていた。
境内に足を踏み入れると
一対の立派な狛犬のお出迎え。
その脇に山主による立て札がある。

アブナイ!
危険ですから
狛犬に~
おい、おい、こいつはヤベエ。
近寄ると狛犬が噛みつくのかえ?
と思いきや、
狛犬に登ったりして遊ばないでください。
     山主
やれやれ。

目黒不動門前に比翼塚あり。

権八・小紫の悲話伝える比翼塚
処刑された愛人白井権八と、
彼の墓前で自害した遊女小紫。
その悲話は [後追い心中] として
歌舞伎などで有名だが、
この比翼塚は二人の来世での幸せを祈り、
たてられたという。

さっき上った、かむろ坂は小紫ゆかりの坂。
禿(かむろ)は江戸の世の高級遊女に仕える、
召使いの少女のことである。

恋仲だった小紫は権八が葬られた、
冷法寺の墓前で自ら命を絶つ。
帰らない小紫を案じたかむろは
目黒に向かい、主人の死を知る。
その帰途、当地付近で暴漢に襲われそうになり、
桐ケ谷二つ池に身を投げて自害する。
彼女を憐れみ、かむろ坂と名付けられた由。

目黒不動、泰叡山瀧泉寺の山門をくぐった。
仁王門脇の池で2匹の龍が
湧水を吐き出している
と思ったら手水場にもう1匹、
小さいのが水を吐いていた
辰年のせいでもあろう、みんな元気だ。

急な石段を上り、お不動さまに手を合わせ、
石段を下らず、裏手に廻って退出した。
北上して目黒通りに出ると
左手に寄生虫館が建っている。
不動前在住の GFと訪れたのは20年前のこと。

権之助坂を上がり、目黒駅へ。
そうだ! 駅ビル内の東急プレッセで
アルゼンチンの馬刺しでも買って帰ろう。