2012年6月1日金曜日

第329話 あきれた三人組 (その1)

入学して4年余り通った大田区立大森第五小学校。
近所に魚市場があって河岸が休みの日には
よくローラースケートで遊んだ。
それにしても近頃トンと見掛けなくなったなァ、あのロスケ。

3年生のときだったかNHKラジオに
子ども討論会みたいな番組があって何回か出演した。
局ではギャラ代わりにオリジナルの筆箱をくれるのだが
級友にずいぶんあげたから相当数出演したハズだ。

当時、NHKはまだ新橋にあり、
そのスタジオに出向いて収録していた。
ある日、当時絶大な人気を誇った、
「お笑い三人組」の出演者の一人、
三遊亭小金馬(現四代目金馬)にバッタリ。
われらガキンチョ、これには歓声を上げましたネ。
「ハイ、ハイ、ボクたち元気だネ」―
なんて言われて帰宅後、さっそく母親に報告したっけ・・・。

ハナシは新橋から銀座へ移る。
ある晴れた日の夕刻。
日本橋と銀座で所用を済ませ、
例によってどこで飲むべエかと思いをめぐらせる。
独り向かったのは「三州屋 銀座二丁目店」だ。
並木通りからちょいと奥まった店頭に立ったとき、
脳裏をかすめたのは
「一丁目店」にゃだいぶご無沙汰だな、これだった。
急遽、方針変更して徒歩3分ほどのご無沙汰店へ。

引き戸を引いて敷居をまたぐ。
接客のオバちゃんに右手の人差し指を立てると、
手招きで「どちらでもどうぞ」の意思表示。
ちまたでは”コワい”と畏怖される有名なオバちゃんだ。
キビキビ、サバサバしたヒトだから、J.C.は好きだがネ。

一番奥左手の大デーブルの端に陣を取った。
「オニイさん、何にします?」―
おっ、うれしいねェ、オニイさんてかい?
やっぱりこのヒト好きだなァ。
「黒ラベルの大瓶を!」―すかさず応える。

泡を極力立てずに注ぎ、ひと息に飲み干す。
自分自身に今日一日ご苦労さんと
つぶやき掛けて大きな息を一つ吐く。
孤高にして至福のときなり。
一日のうち、もっとも好きな時間を過ごしている実感がある。

つまみに金目のあら煮をお願い。
その数秒後、届いた突き出しがブリか何かのあら煮だ。
いけネ、かぶっちまった。
まっ、いいか、もともと突き出しに多くを求めぬ性格ゆえ、
注文したあら煮が増量されたと思えばそれでよい。

=つづく=