2015年2月11日水曜日

第1032話 小雨にけむる土曜の夜 (その3)

動坂下の「動坂食堂」にいる。
地下鉄都営三田線・本駒込駅前から
動坂を降りおりたところが動坂下だ。
文京区の北東のはずれに位置するが最寄り駅はJR田端。
同じくJRの駒込、西日暮里、両駅からもそれほど遠くはない。

目の前に運ばれた穴子の天ぷらに困惑している。
大き目が5片はあまりにも多すぎる。
胃袋に負担が掛かるのは当然として
精神的ダメージも小さくないものがあろう。

それでも天丼じゃなかったのは不幸中の幸い、
これにどんぶりめしが加わったら
もうどうすることもできゃあしないぜ。

新たなビール大瓶(こちらは別腹)とともにおよそ30分は掛けたろう。
おろし醤油、食卓塩、天つゆ、
しまいにゃブルドッグ中濃ソースまで駆使して
どうにかこうにか完食を成し遂げた。

それにしても天ぷらにソース系は合わないな。
ウスターやとんかつソースでも駄目だったろう。
なじまないというか、相性が悪いというか、
普段から口にしてないから舌のヤツが拒否反応を示す。
むしろ、フライドポテト感覚で
トマトケチャップ、マヨネーズ、マスタードのほうが合うんじゃないかな。

逆にとんかつや海老フライに醤油はそこそこイケちゃうのにねェ。
日本の醤油の万能性はやはり大したものなのだ。
中国醤油よりも洗練された切れ味を持つのは
日本人が古来より食べ続けてきた刺身の存在が大きいのだろう。

穴チャンのおかげでもう何も食べられない。
ふと、隣りを見やると、
さっきまで冷奴をつまみに生ビールを飲っていた爺さんが
酎ハイに切り替えて肴はカツカレーライスときたもんだ。
トンカツをルウに絡めて”酎の友”としている。
健啖家だねェ。

壁の時計は20時半を指している。
満腹感はあってもまだ飲み足りない。
そうだ! 目と鼻の先にスナック「K」があるじゃないか!
行きつけとは言い難いが月に1度はオジャマする店。

1分と歩かず「K」に到着。
口開けかと思いきや、先客が5名もいてすでに盛り上がっている。
おおよその営業時間は20~25時のハズ。
ところがスタッフを1人雇い入れ、18~26時に変更した模様だ。

時間はたっぷりあるから腰を落ち着けて飲み始めた。
生ビール→芋焼酎→ハイボールと飲んだ、飲んだ、飲みやした。
隣人と語らったり、カラオケを歌ったり、
いや、時の経つのは早いものですな、
結局は薬局、ママに送られて店を出たのは朝の4時半だとヨ。

雨はすっかり上がっちゃいても
翌日、もとい、当日はヒドい二日酔いに悩まされる始末で
日曜日を丸々棒にふりまししたとサ。
バッカじゃないの?

=おしまい=

「動坂食堂」
 東京都文京区千駄木4-13-6
 03-3828-4498