2015年2月20日金曜日

第1039話 舞い戻って玉子チャーハン

先週、取り上げた文京区・白山上にある町場の中華屋「兆徳」。
素朴なラーメンと焼き餃子のセット(950円)を
二日酔いでゲンナリの日曜夜に食したのだった。
ハナシの締めは
”今度は玉子チャーハンを食べにきたいが1年先になっちまうかも?”
であった。

ハハ、案ずるより産むが易し。
1週間後のネクスト・サンデーに難なくクリアしてしまった。
われながら電光石火の早業(はやわざ)である。
ただし、自分で自分をほめてやりたいとまでは思わない。

その日は昼過ぎにとあるマンションの一室を訪ねた。
場所は白山に隣接する同じ文京区の本駒込。
もちろん目当ては「Love in the Afternoon」、
そう、「昼下がりの情事」であった。

お相手は銀座のオーセンティック・バーでナンパしたK子嬢。
つぶらな瞳にショートヘアの可愛い美女である。
胸のサイズにほとんど関知しないJ.C.ながら
かなりのボイン(死語か?)の持ち主だ。

なあ~んてことがあるハズもなく、
相方は池袋の酒場で隣り合わせたK子老人である。
このK子は女性の名ではなく、男性の姓だから誤解のないように―。
老人の手元が狂ってひっくり返した盃の酒が
J.C.の膝を少しく濡らしたのが会話の始まりだった。

問わず語りによると、
奥さんに先立たれて今はマンションに一人住まい。
遠くはない町に嫁いだ長女が月に二度か三度、
掃除と洗濯にやって来たついでに
亡き妻仕込みの料理を何品か作ってくれるのだそうだ。
きんぴらごぼうが好物だったが最近では歯が立たなくなったんだと―。
同情禁じえず。

趣味というか、楽しみは大衆酒場でのつつましやかな晩酌と、
将棋盤相手の詰め将棋だという。
そこでヘボ将棋には定評のあるおのが身をK子老人に預けた次第。
当日の戦績はこちらの2勝3敗、老練な振り穴熊にやられた。

その帰りに立ち寄った「兆徳」なのである。
ビールも餃子も焼売も取らず、玉子チャーハン(650円)一点勝負だ。
ホントに玉子とねぎのみのチャーハン
ちり蓮華で一匙パクリとやった第一印象。
薄味の中にもほんのりと本格中華の風味あり。
硬めに炊かれたライスが功を奏している。

でもネ、ずっと食べ続けていると飽きてくるのよねェ。
やはり独りでの炒飯一人前は難儀やのォ。
ラーメンのときにそれほど感じなかった、
清湯の化調が此度はちょいと気になった。
遠方から出向くほどの逸品ではないな。

こと教育に関しては都内有数の文京区も食文化においてはまだまだ。
その証しにここにはロクな酒場がないもん。
もっとも教育の場と酒場とはしょせん水と油だったか・・・。

「兆徳」
 東京都文京区向丘1-10-5
 03-5684-5650