2015年4月21日火曜日

第1081話 めざしうれしや麦とろ定食 (その2)

根津の谷と茗荷谷、二つの谷に挟まれた台地は
向丘と白山であり、馬の背のごとく南北に走っている。
その白山上、「戸隠そば 満寿美屋」にいる。

前話で豊富な品書きの一部を紹介したが
さらに加えてこの店の特徴でもある小ぶりのどんぶり、
いわゆるミニ丼の多彩な顔ぶれにもふれておかねばならない。
”おそばとご一緒にミニ丼をどうぞ” と謳われており、
これは全品ご披露しよう。

=ミニ丼=
 かつ丼 鴨丼  以上450円
 麦とろ丼 じゃこ高菜丼 カレー丼 肉味噌丼
 牛丼 ひじき丼 かき揚げ丼  以上350円

ここまで揃ったラインナップを日本そば屋で見るのは初めてだ。
食べ手にとってはまことにけっこうなことではあるけれど、
さすがにひじき丼はやり過ぎで
こんなん誰も注文せんやろ、と思ったものの、
渡る世間は奇人ばかりなりけり。

「アラ、私は歓んでお願いするわ」
「玉子とじにひじき丼なんて素敵な組合わせじゃない」
かように言い放った友人二人。
”こじき”(禁句にして死語であろうか?)が姿を消した今の日本、
代わって”ひじき”が台頭してるんだなァ。

品書きを吟味する間に早くも中ジョッキは空っぽ。
わがふるさと、信州の生んだ銘酒・真澄の吟醸に移行した。
七笑といい、千曲錦といい、信濃の酒は好きだ。
いえ、これはけっしてひいき目ではありませんゾ。

結局、白羽の矢を立てた注文品は
サブタイトルにあるように麦とろ定食。
というのも、店先のサンプルケースをチェックして発見したことに
この定食には2本のめざしが添えられてる。
目黒にサンマあれば、白山にメザシあり。
酒のアテによし、飯の友にまたさらによし。

あの土光サン(古すぎてどなたも判らんか?)が愛しためざし。
麦とろ定食を選択したのは
ひとえにめざしの存在があったればこそなのだ。
普段は晩酌時にいきなり定食など頼まないが
この宵は空腹感激しく、ついオーダーしてしまった。

まずはご覧あられたし。
2尾の小魚に存在感あり
こうしてワンショットに収めると、
主役の麦とろを食ってしまっているではないか!

=つづく=