2015年4月30日木曜日

第1088話 レバをたっぷり食べたレバ (その6)

「喜多八  西日暮里店」の特製煮込み鍋は期待外れだった。
単に煮込みではなく、
ご丁寧に煮込み鍋を謳うのは加賀屋グループの特徴で
どうやら当店はそのグループの流れを汲むらしい。
西日暮里店を名乗るからには
ヨソに本店か姉妹店があってしかるべきだが
板橋に本店があるとのこと。

何かほかにもう一品をと、品書きをチェック。
煮込み鍋もさることながら、フツーの鍋が目についた。
かき鍋・たらちり・寄せ鍋・豚しゃぶ、
これがすべて二人前で金2千円也。
おい、おい、カキもタラもみんな同値かい。
ずいぶんアバウトだな。
今さら鍋を二人前はシンドいし、
相方の意向をうかがうと、やはりここが潮どき、
河岸を変えることで意見の一致をみた。

雨はいよいよ本降りである。
JRで上野へゆき、構内の店舗で妥協の一手かなァ?
鎌倉へ帰るP子にも好都合だろうし・・・。
そのつもりで駅方面に歩き始めると、
すぐ隣りに町の中華屋があるじゃないの。
店頭に貼られた手製ポスターによれば、
ラーメンとレバニラが自慢の様子だ。
ふ~む、レバニラねェ。
わざわざ電車に乗ることもないか。
打診すると、ここもまた意見の一致であった。

雨は間断なく降り続いている。
即断即決に越したことはない。
とにかくダメ元で飛び込んだ。
すると、老夫婦が今まさしく賄いの真っ最中ときたもんだ。
われわれ二人オジャマ虫、
食事のジャマをしちゃったみたいで恐縮してしまう。

それでも二人揃って「いらっしゃいませ!」の元気な発声があった。
狙い通りにビールとニラレバを所望すると
店主は食べ掛けのまま、おもむろに立ち上がって厨房内に入る。

所要時間はホンの数分。
チャッチャッチャと手際よく中華鍋をあおったと思ったら
そのままガスレンジの上に鍋を置いて食事に戻るじゃないの。
おい、おい、オレたちのレバニラはどうなっちゃうんだい?

するとすかさず今度は女将さんが食事を中断、
中に入ってそのニラレバを皿に盛りつけましたとサ。
調理と盛りつけが分業制になっておる。
いや、マイッたネ、これ以上の夫唱婦随がございましょうか。

皿を運んできたのも女将のほう。
だが、運ばれたレバニラを一べつして
われわれは互いに互いの瞳を見つめ合ったのでした。

=つづくー