2015年4月27日月曜日

第1085話 レバをたっぷり食べたレバ (その3)

西日暮里の居酒屋「喜多八」は宵の口から盛況をきわめていた。
価格設定に経営者の良心を感じ取ったJ.C.、
店主の風貌と動向を探ると、温厚のようでいて仕事には厳しそう。
目下、厨房で弟子を教育中だった。

若い弟子は店主よりずっと背が高い。
細身でひょろりとしており、ヤケに手足が長い。
色浅黒く、どうみても倭人ではない。
われわれのそばにいた接客係のアンちゃんもしかり。
厨房担当とそっくりの面貌と体形である。

そういやあ、ビールと一緒に
突き出しの大根浅漬を運んできた少女も
日本語たどたどしく、明らかにフロム東南アジア。
はは~ん、ことここに及び、ピンとくるものがあった。

折りよくフロア・マネージャーらしき女性が
注文を取りに来たので
実はこの人も東南アジア系なのだが、訊いてみた。
「あなたたちはみんなミャンマーの人?」
「アッ、ハイ、そうです」
予想は的中する。

以前、よく利用した日本橋の居酒屋は
店主以外すべてミャンマー人のスタッフで
彼らの温厚な性格は使用人として打ってつけの国民性なんだと、
その店主から聞いたことがあった。

それにしてもミャンマーの若者は手足が長く背が高い。
女性はタイやマレーシアと大して変わらないのに男はまったく違う。
風貌は東南アジアとインドの中間といった感じだ。

ここでJ.C.、ずいぶん昔のことを思い出した。
あれは42年前、東アフリカを一人で旅していたときだ。
ケニアの首都・ナイロビを基点として
インド洋を臨む東海岸のモンバサとラムー、
さらに隣国のウガンダやタンザニアをバスでめぐっていた。

内陸にあるウガンダの首都・カンパラや
キリマンジャロのふもとのアリョーシャやモシの町を周遊していると、
途中、停留所でもないのにバスがやたらに停まる。
この場合、乗り込んでくるのはまず間違いなくマサイ族だった。
槍1本でシンバ(ライオン)に立ち向かう、
あの勇猛果敢なマサイである。

さすがに槍を携えてはいなかったが
男も女も上半身裸で天真爛漫。
バスの運賃を払わなくてもとがめられない。
ついでに国税も免除されているとのこと。
彼らには国籍がないのだ。

=つづく=