2015年4月24日金曜日

第1084話 レバをたっぷり食べたレバ (その2)

雨にたたられたその夜は荒川区・西日暮里にいた。
のみともにしてめしとものP子と一緒だ。
駅からすぐの横丁は右に居酒屋、左にバルである。

「お好きなほうをどうぞ」―そうは言ってみたものの、
十中八九、敵はバルをチョイスするハズ。
当方の頭の中は早くも赤ワインのアテにどんなタパスを頼もうか・・・
そのことでいっぱいだった。
好物のボケロネス(ヒシコイワシの酢漬)はあるだろか・・・

ところが予想はものの見事に覆される。
なんとヤッコさん、右手の大衆酒場を選んだじゃないの。
実に意想外、おどろき桃の木であった。
ただ同時に感心たことも確か。
今さら気取ってワイングラスを合わせる仲じゃなし、
見かけより実質が大切だものネ。

おおかた酒場好きのこちとらに気をつかってくれたのだろうヨ。
すると、そうでもなかった。
曰く、鎌倉や横浜にバルやカフェはいくらでもあるが
東京の下町みたいに人情味あふれる、
ザッカケない飲み屋はきわめて限定的との仰せ。
ましてやJ.C.がしょっちゅう口にしている、
美味しい焼きとんにありつくなんてほとんどムリ。
そう言って細い眉にシワを寄せるのだった。

そうでしょう、そうでしょう、
三浦半島ももうちょい先の横須賀くんだりまで足をのばせば、
名店・佳店に遭遇することも可能になるけれど、鎌倉じゃあねェ。
せいぜい、世のドヒマな奥様方がありがたがる、
うわべばかりで中身のない和食店が幅を利かせてるだけだもん。
「おまえは、エラいゾ!」―そう言ってほめてつかわした。

入店したのは「喜多八 西日暮里店」。
左にカウンター、右にテーブルが配置されている。
そのどちらも8割、あいや、9割方が埋まっていた。
地元のオジさん、近隣のリーマンに愛されているなら
大きくはずすこともなかろうと安堵したが、ここでハタと思い当たる。
数年前に来てるぜ、ここ! このことであった。
しかも記憶が確かなら、評価はそんなに高いものじゃなかった。

ありゃりゃ、やっちまったかな?
まっ、駄目ならダメで向かいのバルをスペアタイヤとするかの。
安堵のあとに去来した懸念の払拭に成功の巻である。

折りよく2席続きで空いたカウンターの一角に滑り込み、
コップに注いだ瓶ビールで乾杯する。
大瓶が500円とはうれしいじゃないの。
経営者の良心がストレートに表われている。
大衆酒場はかくありたし。

店主のご尊顔を拝するため、店内を見回すと、
いました、いました、カウンター内で
何やら若いアンちゃんに調理の指導中でありました。

=つづく=