2017年11月30日木曜日

第1755話 谷中でちょい飲み3軒 (その4)

「立呑 写楽」で自家製レモンサワーを飲んでいる。
炎の岩塩焼きが今にも整いそうな気配だった。
1枚の和牛サーロインはステーキサイズではあるものの、
すき焼き用くらいの薄切り。
ちょいと割高じゃないかな?
そうは思っても食べてみなけりゃ始まらない。

岩塩の上に牛肉を寝かしつけて準備万端、
女性がガスバーナーに着火しようとする。
ところがこのバーナー、ウンともスンとも言わない。
二度三度試みても着火しないのだ。
業を煮やしたワケでもなかろうが
厨房から料理人が現れて再三トライ。
何とか火はついた。

バーナーで炙ること十数秒で完成。
岩塩焼きにはポン酢とニセわさびが添えられている。
何もつけずにそのまま1切れ。
うん、これは確かに和牛だネ。
適度な脂身がそれほどシツッコくない。
あとはポン酢でいただいたものの、
レモンサワーとの相性ははなはだ疑問である。

滞在時間は15分と少々。
次はどこにしようかな?
腰を浮かせたときに英語の会話が耳に飛び込んできた。
振り向くと、入口そばのテーブルで何かモメている。

おそらく米国人だろう。
40代と見受ける夫婦に小学校低学年くらいの娘、
親子三人連れである。
父親が接客の青年にしきりに何かを訴えている。
”portion”という単語が聴こえた。

店を出るために入口に向かうと、
必然的に彼らのテーブルの脇を通ることになる。
卓上には小鉢に盛られた3皿のじゃがバターが並んでいた。
ここでピンときやしたネ。
ダディーの主張は「あまりにも少ないんじゃないの?」
というものだろう。
ウエイターにはイマイチ真意が伝わってないかも知れんがネ。

見ればそれぞれのじゃがバターのトップには
ラクレットチーズがホンのちょっぴり。
確かプレーンのじゃがバターが300円で
じゃがバター・ラクレットは800円じゃなかったかな?
ってことは三人前で2400円。
判る、判る、父ちゃんヨ、アンタの気持ちはよく判る。
いくら何でもコレで800円はないよねェ。

=つづく=