2017年12月5日火曜日

第1758話 肩透かし三連発 (その1)

渋谷のサロンで理髪後、渋谷駅にやって来た。
この日は家を出たときから夜の目的地を決めていた。
東急東横線の祐天寺である。
駅名の由来は明顕山祐天寺、浄土宗のお寺だ。

十数年前、この地にはちょくちょく現れた。
GF の住まいがあったからである。
よってご当地の祐天寺だけでなく、
近隣の中目黒・学芸大学・武蔵小山辺りではよく飲んだ。

この夜、ターゲットとした店は居酒屋「かっぱ」。
和歌山県出身の女将が
紀州名物の熟(な)れ寿司を手造りしているという。
一種の押し寿司である。
奈良の柿の葉寿司が好きだから
隣県の熟れ寿司もぜひ食べてみたい。

「かっぱ」は祐天寺駅からあるいておよそ10分、
どちらかと言えば学芸大学からのほうが近いが
愛着のある祐天寺界隈をブラブラしてみたかったのだ。
それが人情というものだろう。

駅の周りを流したあと、駒沢通りに出て区役所通りに入る直前。
エリアでは人気の高い中華料理店、
「菜香」の大きな看板が見えた。
あれっ、こんなにデカい看板あったかな?
それに大通りから見える場所だったかな?
記憶が曖昧なのかもしれないが二度は来てるしなァ。

帰宅後、調べてみたら最後の訪問はおよそ10年前。
でも、近所は近所だろうが、やはり違うような気がする。
今では店主夫婦が高齢となったためか、
週2回しか店を開けないそうだ。
それでも営業が成り立つのだから
集客力に拍車がかかったものとみえる。

目黒区役所の前にこれもまた懐かしい鮨屋があった。
「鮨 たなべ」を訪れたのは2003年2月。
あれから14年半かァ。
小体な店ながら、よくまァ存続しているものよのぉ。

その際に何をいただいたのかは忘却の彼方。
食日記をめくれば判明するけれど、
膨大な数にのぼる日記を引っ張り出すのが億劫。
こちらは根気の欠乏に拍車がかかっている。

覚えているのは店主との短い会話だ。
子持ちの小さなヤリイカがつまみに出て
「これはヤリイカの子どもなんですかネ?」―
 問いかけるJ.C.に、親方応えて曰く、
「そりゃそうでしょう、このサイズじゃ親にゃ見えないもの」

=つづく=