2017年12月21日木曜日

第1770話 ブロードウェイの天ぷら屋 (その3)

「住友」で穴子の天ぷらをいただいたところ。
昼下がりの高清水を飲りながら
ネクストのメゴチを待っている。
シアワセなひとときであった。

品書きに2~3匹とあったメゴチは小さいのが3匹できた。
江戸前天ぷらを代表する魚種、
キスやメゴチは大ぶりのほうが旨みが強くて好き、
そういう向きが多いなか、J.C.は小ぶり派なのだ。
3匹のメゴチを見つめながら、こいつはラッキーだと独り、
文字通りゴチていた。

うん、うん、美味い、旨い。
まず2匹を塩、残った1匹を天つゆで楽しむ。
キスとは異なり、やや硬さの気になる尻尾もすべて完食。
海老やサカナの尾を残す人の気が知れないネ。

清酒を菊正宗の常温に替える。
やはりこのほうが好みだ。
何たって子どもの頃からなれ親しんでいるからネ。
いえ、正月とか誕生日とか、特別な日だけですがな。

穴子1尾にメゴチ3尾、もう1種いっときたい。
選んだのはアジでなく、イワシでなく、ましてや海老でもなく
今が旬のハゼである。
ほかの魚種は通年出回っていても
ハゼばかりはそうはいかない。
サカナに限らず、季節感を運んでくれる食材はうれしい。

2匹付けとメニューにあったハゼは3匹登場した。
菜箸で盛付けながら若旦那が再び一言。
「今の時期は小さいので3匹揚げました」
いいですねェ、ありがたいですねェ。

ハゼのトリオはメゴチ同様に
初めの2匹は塩、最後の1尾は天つゆでやった。
う~ん、天つゆのほうがいいかな。
当店のつゆには少量の大根おろしとおろし生姜が
ハナから投入されている。

ハゼの身は穴子以上にホックリしていた。
骨に硬さがないから尾まで美味しくいただける。
そして本日のベストがこの小ハゼたちであった。
中瓶1本、お銚子2本、サカナ3種、お代は締めて2760円也。
どんぶりは食べなかったが満足のランチ兼一酌といえる。

中野ブロードウェイをあとにして早稲田通りを西下する。
向かったのは隣り町の高円寺である。
高円寺で一飲に及ぶのではないが
一つの心づもりがあったのだ。

=おしまい=

「天ぷら 住友」
 東京都中野区中野5-52-15
 03-3386-1546