2017年12月8日金曜日

第1761話 肩透かし三連発 (その4)

目黒区・中央町の「かっぱ」。
そのカウンターの隅に心砕かれたJ.C.がいた。
狙いを定めた熟れ寿司がなんと5種全滅の大惨事。
何とかほねくを見つけ出し、注文に及んだところである。

女将の顔色がパッと明るくなると思いきや、
なぜか曇ったときにイヤ~な予感がしたものだ。
「ごめんなさい、しばらく入荷がなくって―」
ガッビ~ン!
一度ならず二度までも無情の嵐が吹きすさぶ。

こういうのを駄目押しっていうのかな?
いや、トドメが正しいのかな?
どっちでもいいけど、
夜空のムコウに飛んで行きたくなっちまったぜ。

残る余力もないままに三たび品書きを手に取った。
結局は薬局、
お願いしたのは玉子焼きという悲劇。
いえ、悲劇と断ずるのは当事者のわれ一人。
おおかたの読者の目には喜劇としか映らないわな。
はるばる祐天寺まで遠征してきて玉子焼きとはこれいかに?
まったくよう、小学生の遠足じゃないんだから―。

仕方なく頼んだ玉子焼きは4種の中から選んだのだった。
 ふつう ねぎ 各450円
 梅干し 納豆 各500円
熟れ寿司もそうだったが品揃えだけは豊富だネ。
種類はいいから在庫の管理をお願いしますヨ、ホントに。

玉子であれば売切れや入荷ナシの懸念はない。
ふつう・ねぎじゃつまんないし、
酒の席の納豆は異臭を放ってイヤだ。
消去法ってわけじゃないけど梅干しを所望した。

考えてみりゃ梅干しの玉子焼きって初体験かもしれない。
おそらく初めてだろう・・・だって記憶がないもの。
女将自らが焼いてくれたソレは
大した時間も掛からず、目の前に置かれた。

ここで日本酒に移行する。
指名したのは世界一統・紀州五十五万石の冷たいヤツ。
大そうなネーミングである。
もちろん由来は石高・五十五万石の徳川御三家・紀州藩。
紀ノ川の伏流水から成る本醸造酒だ。

キレとコクが調和する酒は美味かった。
梅干しの玉子焼きもけっこうだった。
梅干しだけでなく赤紫蘇が同居していて
アクセントの妙を楽しめる。
やっとこさ、本来の落ち着きを取り戻した、
J.C.オカザワでありました。

=つづく=