2017年12月14日木曜日

第1765話 牡蠣と鰯と鹿肉と (その2)

JR大森駅東口から徒歩1分。
ほとんど駅前、というか駅脇の「イタリアニタ」。
店名は”イタリアらしい”、”イタリアっぽい”という意味だ。
内装や雰囲気にあまりそんな感じはないけどネ。

最初の1皿に広島牡蠣のコンフィを選ぶ。
コンフィはフランスに古くから伝わる食材の保存法。
肉の脂漬け、野菜の酢漬け、果実の砂糖漬けなどだが
日本では主として肉の脂漬けを指すことが多い。
とりわけ鴨もも肉のコンフィが有名だ。

牡蠣のコンフィは中国野菜のターツァイ(搨菜)と一緒盛り。
ターツァイも炒め煮状態だが
牡蠣に合わせて冷製で供される。
両者の相性はとてもよかった。

パンはフォカッチャとバゲットが半々。
バゲットにはバターがほしいけれど、
シチリア産のオリーヴオイルが香り高く、
どちらも美味しくいただける。

牡蠣のコンフィにはパン類が必須で
これはハム・ソーセージと同じこと。
パンがなければ牡蠣の魅力も半減されてしまう。
パクパクパク、うん、美味い!

2皿目はトロ鰯のマリネ。
トロを冠するくらいだから脂のノリはかなりのものだろう。
はたして油はノッていたものの、
シツッコくはないし、鰯特有の生臭みとも無縁であった。

スペイン・バルでは、あれば必ず注文するボケロネス。
いわゆるカタクチイワシの酢漬けだが
そんなつもりで鰯のマリネをお願いしたのだった。
これには薄切り大根が添えられて
聖護院蕪の千枚漬けを連想させた。
当店のシェフは野菜の使い方に秀でている。

良質のオリーヴ油のおかげでパンがすすむ。
珍しくお替わりまでしてしまった。
ストマックのキャパを忘れた愚挙と言えなくもない。
こういうのってあとで利いてくるのよねェ。

アンティパストのお次は
パスタ類のプリモに行くのが普通なれど、
J.C.の場合は主菜のセコンドを先にする。
パスタは中華料理における麺類のような位置づけだ。
魚介が続いたので肉が食べたい。
ここで二人はボードの字を読んだ。

=つづく=