2018年1月5日金曜日

第1781話 都の西北から東北へ (その5)

夕暮れの北区は王子の町。
カラオケボックス「K」では
さんざ歌ったというより、さんざビールを飲んだ。
しょっぱい「メルシー」のラーメンスープのせいだろう。

暖簾をくぐった「宝泉」はまだ五分の入り。
ほとんどの客が左右二つあるカウンターの右側を占めている。
われわれもそちらに誘導された。
ちなみに右はオバちゃん、左はオバアちゃんの取仕切りだ。

ビールはじゅうぶんにつき、生ホッピーをお願いする。
もともとそのつもりでいた。
何となれば、生ホッピーにはまずお目に掛かれないからだ。
格別に旨いワケではないが気分のノリは格段によくなる。

T子サンはレモンサワーだったか、ハイボールだったか、
よく覚えちゃいないけど、炭酸モノであることは確かだ。
つまみはJ.C.がかきフライ、相方はポテトサラダである。
するとポテサラが売切れで
代わりにすすめられたカボチャサラダを素直に了承。
まっ、芋・蛸・南京は女子の三種の神器だもんネ。

生ホッピーをお替わりし、チョイ焼きたら子&ヤワリメ。
ヤワリメは柔らかいアタリメのことだ。
小ぶりのするめいかをあらかじめ漬け汁に浸して置き、
じゅうぶんに戻してから焼き上げる。
なかなかのアイデアじゃないか。
漬け汁は生醤油と日本酒、それに何かの出汁だろうか?

生ビールに切り替えてポテトフライを追加した。
町の肉屋にありがちなパン粉をまとったヤツを想像したが
あにはからんや、
マックのフライドポテトみたいのが運ばれる。

仕上がりもそれなりだ。
マックより上ながらモスと同等といった感じ。
べつに悪くないけど、ケチャップじゃなく、
アイオリ(にんにくマヨ)がほしいかな。

夜の町へ。
恐るべきことにT子サンもまた、
スナッキー(スナック女子)であった。
かつての呑ん兵衛横丁、その名もさくら新道に赴くと、
廃れに廃れた通りには営業を続けている店が
スナックと小料理屋(?)の2軒のみ。
一者択一でスナック「M」に入店をはたす。

独りで切盛りするママは八十路に差し掛かっている。
それを常連の女性たちが内に外にサポートする景色だ。
何気なしに見とめた片隅のスナップ写真に瞠目した。
おやまァ、何と可愛らしい。
二十歳の頃のママのお姿。
供されたチャームを打っちゃって
ポートレートを肴に飲み始めた次第なり。
あゝ、飛鳥山のふもとにも夜の帳が降りてゆく。

=おしまい=

「宝泉」
 東京都北区王子1-19-10
 03-3914-2726