2018年1月23日火曜日

第1793話 私を谷中に連れてって (その4)

七面坂の「necojitaya」。
日本語表記なら「猫舌家」であろうヨ。
カウンター内で客の相手をするのは二人の女性だ。
マダムと彼女の弟の嫁サンで
義理の姉妹ということになる。

キャンティのグラスを傾けながら
シスターズも交えて計4人、
とりとめのない世間話に小花を咲かせていた。
相方もアソビ人につき、
仕事の話題にならないのが何よりもいい。

会社や上司の悪口を言い合いながら飲むのは
サラリーマンの特権であり、同時に汚点でもある。
ああいう酒は美味いわけがなく、
ポケットマネーの無駄遣いもいいところだろう。

何だかノドが渇いてきて
われのみ、生ビールに移行した。
銘柄は好みのスーパードライ。
われながらビール好きは半端じゃないネ。

グラスの容量は小ぶりの中ジョッキくらい。
とりとめのないハナシを肴に
コレを3杯も空けちまったヨ。
今宵はこの時点まで、まだトイレに一度もいっていない。
まったく、おのれのチンチン代謝、もとい、そして失礼ッ!
おのれの新陳代謝はどうなってんのかなァ。

1組のカップルと単身の青年が入店したのを潮目に
そろそろ河岸を変えようか―。
H谷サンは女性スタッフとの会話がよほど楽しい様子で
まだ居座る気らしいが、
こういう場所でスタッフ独占の長居は嫌われる。
重い腰を引っ張り上げるようにして
いざ、4軒目の巻であった。

坂を上り切ってしばらく、
谷中の穴場、初音小路にやって来た。
一見、怪しい店々が軒を連ねている。
一番奥の左側は各店共通の共同トイレ。
その真向かいに目当てのワインバーがあった。
右隣りは以前に何度か利用したことのある、
焼き鳥屋「鳥真」だ。

バーの名前は「C'est Qui ?」。
”セッキー?”と発音するが
その仏語の意味は
”それって、だ~れ?” である。

「necojitaya」
 東京都荒川区西日暮里3-14-7
 03-5834-7357