2018年1月18日木曜日

第1790話 私を谷中に連れてって (その1)

二ヶ月半ほど前に森下で飲み歩いた、
のみとも・H谷サン。
「私を下町の森下に連れてって!」―
そう、のたまわった御仁である。
此度は
「私を谷根千の谷中に連れてって!」―
との仰せである。

数日前に谷中よみせ通りの「麺や ひだまり」にて
和塩らぁ麺をすすっった、もとい、
音無しで食したばかりだから
(ええ~っ、また谷中かヨ)
胸の奥でつぶやいたものの、
人の好さでは人後に落ちないJ.C.のこと、
二つ返事で請け負ったのでありました。

当日は祝日の土曜日。
そう、天皇誕生日だった。
谷中といえば、都内有数の寺町だけど、
お寺めぐりをしても始まらないから
当然、飲み歩くエリアは
夕焼けだんだんから谷中ぎんざ、
そしてよみせ通り界隈になる。

しかしながら、それは観光客を含めた一般人のこと。
その土地を知り尽くしたわれわれクラスになると、
行動範囲はグ~ンと拡がるのだ。
エッ? 何だって?
上から目線はやめろっ! ってか?
ハイ、スンマソン。

この辺りの穴場といえば、
一に初音小路、二にすずらん通りでキマリ。
三四もなければ、五などない。
上記二箇所は昭和の匂い濃厚にして
レトロスペクティヴな小路なのである。

当然のことながら案内する側としては
訪れるべき店々を数軒、頭の中に描いていた。
ただし、土曜といえども祝日のこと、
店によっては休業日に当たる懸念がある。
よって、待合せの前に町をぶらつき、
営業の確認を怠らなかった。

その道すがら、
数ヶ月前にオープンしたばかりのカフェの店先で
メニューボードをながめていると、
中からうら若き女性スタッフが現れて
「よかったらいかがですか?」―
笑顔で声を掛けられた。

おっと!
目元さやけき美形は紛れもない、
好みのタイプじゃないですか!

=つづく=