2018年11月5日月曜日

第1995話 書割みたいな飲み屋街 (その3)

京王新線・幡ヶ谷駅近く、甲州街道の北側にある、
小さなアーケードには飲食店が数軒並んでいる。
大阪発祥の「串かつ 名代(なしろ)」で
浅草以外ではまず飲まない電気ブランを飲んでいた。
頭の中に高倉健の「唐獅子牡丹」がこだましている。

このとき突然、ジャマをしたのが
店内にあるユーチューブ動画のスクリーン。
画面はエゴラッピンにの「色彩のブルース」だ。
いや、これはジャマどころか、モースト・ウェルカム。
大好きな曲なのだ。
中納良恵の歌声により、健サンはフェイドアウェイしていった。

気をよくして串かつのキスとチーズもちを追加する。
生ビール、電気ブラン、5本の串かつ&キャベツ。
それぞれにそれなりに美味しくいただいて会計は1350円也。
さあ、書割横丁に乗り込むゾ。

再びこのとき突然、襲来したのが折からの驟雨。
不安定な大気がもたらした雨足の強さにたじろいだ。
横丁は目と鼻の先なのに、これじゃたどり着けないヨ。
たまたま串かつ屋の向かいにあった、
「TSUTAYA」に逃げ込んで雨宿りの巻である。

驟雨というのは本来、ザァ~ッときてすぐやむもの。
いや、やまなければならない雨。
それがどうしたわけか、この夕刻の驟雨は掟破りだった。
30分以上降ってもやむ気配がサラサラない。
都知事じゃないが”サラサラない”は人気を落とす。
少しは雨宿りする身にもなっておくれヨ。

1時間近く足止めを食らったろうか。
雨足が弱まるのを見計らい、
ようやく舞い戻った本日3度目の書割横丁。
目当ての2軒をチラリとのぞくと、
どちらもカウンターに空席があった。
しめしめ。

牛タンなんてしばらく口にしてないから
「萬月」にしてみるか。
そのあと「こまい」に流れればいいじゃないか。
いや、ちょいと待て!
腹に収まった5本の串かつが
文字通りボディーブローのように効いてきた。

「こまい」の引き戸を引くと、女将が「いらっしゃい!」。
カウンターのほぼ中央に落ち着いた。
1席おいて右に単身の女性客。
左側も1席おいてこれまた女性が一人。
これを両手に花とは言わぬが
書割横丁では女性の一人飲みが流行りなんだねェ。

=つづく=

「串かつ 名代」
 東京都渋谷区幡ヶ谷2-13-4
 03-3370-7452