2018年11月27日火曜日

第2011話 7席だけのワインバー (その2)

たった7席の小さなワインバー「マチルダ」。
ノドが渇いていたので
最初の1杯はスプマンテのリオ・ロッカ。
あゝ、これがビールだったらなァ・・・
未練心につまづきながら、落とす涙の哀愁列車の巻。
ちょっと何言ってるか判らん! ってか?
ミッチーこと、三橋美智也ですがな。

2杯目からは赤。
アルザスのピノ・ノワール、その名もピノ・ボワールを。
ノワール(黒)をボワール(飲む)にかけた、
駄ジャレみたいなネーミングだ。
ス~ッとノドを通って、ほのかな残り香が立ちのぼる。

つまみは相方が主張した冷奴。
つまらんモノを通したもんだが
パクチーと甘辛い中華風のタレが悪くはない。
でも、パックから出しただけの豆腐はいただけない。

それに加えて舞茸と柿のサラダ仕立て。
クルミが散らされ、タイムの小枝が1本添えられている。
こちらは水準に達していたものの、
特段の美味とは言い切れない。

ほどなく女性2人組とカップルが1組、
立て続けに来店して1席を残すのみとなった。
こりゃ長居はできんゾ、何かそわそわしてきたヨ。

3杯目はイタリアの赤で Zeno '14 Voltumna。
ツェーノ ヴォルツンナとでも発音するのだろうか。
店主の説明では品種がサン・ジョヴェーゼらしいが
一口含んで飲み下すと強烈なピノ・ノワールの個性。
とてもサン・ジョヴェーゼとは思えない。
裏のラベルを確認したら、案の定、
ピノ・ネロ(ピノ・ノワールのイタリア版)との混合だった。

この秀逸なワインに合わせ、
4種キノコのブルーチーズ・グラタンを追加する。
どんなキノコか、興味を抱いて訊いてみたら
舞茸・椎茸・占地(しめじ)・エリンギのカルテット。
高価な欧州モノは望むべくもないが
当たり前すぎて面白味がない。
いえ、料理自体はワインとシンクロしたんだがネ。

単身の男性客が入ってきた。
これで満席である。
ワインも3杯づつ飲んだし、料理も3品いただいた。
ここが潮の引きどきと感知してお会計。
2人で8000円弱は高くも安くもない。

ニッコリ笑った女店主の目に
やさしさとうれしさが同居している。
(こちらのお客さま、よく判ってらっしゃるわ)
言葉に出さなくとも瞳がささやいていた。
勝手な思い込みかもしれないが
当たらずとは言え、遠からずであろうヨ。

「マチルダ」
 東京都渋谷区初台1-36-1
 03-5351-8160