2018年11月1日木曜日

第1993話 書割みたいな飲み屋街 (その1)

その日は渋谷で理髪を済ませ、
サロンの前で渋谷区のコミュニティバスに乗り込んだ。
笹塚行きに揺られること10分あまり、幡代の交差点で下車。
ちょうど2ヶ月前にたどったコースの踏襲である。

停留所のすぐそばにある、
ジャマイカン・カフェ「C」で軽く飲るつもりだった。
ところがギッチョン、店のドアが閉ざされている。
エッ、まさか?!

いえ、閉業したわけじゃなかった。
貼紙によれば、ちょいと長めの夏季休暇の由。
もっとも今の時期なら秋季休暇か―。
取りあえず安心した次第。
安心はしたけれど、
せっかく来たのに休みでは落胆もする。
まっ、そのうち舞い戻ればそれで済むことだがネ。

はて、困った。
15時半じゃ、開いてる店などないヨ。
どこぞへ河岸を変えてみるか―。
だけど時間つぶしのための長距離移動は
それこそ時間の無駄にしてスイカの浪費にもつながる。
賢者、遠きに赴かず、その精神でまいりましょう。

よって近場で飲むことにした。
渋谷区・幡代は初台と幡ヶ谷の中間に位置する。
オペラシティに用はないから必然的に向かうのは幡ヶ谷。
この町は甲州街道の北側にプチ飲み屋街を抱えている。
舞台の書割みたいな情緒をたたえる一画である。

歩き始めてほどなく、6号通り商店街に到着。
通りには肉バルやシュラスケリアがあり、
どちらかというと若者向き。
西へ1本入った界隈が書割横丁(勝手に命名)だ。
辺りをぶらぶらしていれば時の経過も速かろう。

最後にここで飲んだのはいつだったかな?
帰宅後、調べてみたら7年前の師走であった。
笹塚で2軒回ったあと、
書割横丁の「魚貞」、「太陽食堂」を連荘。
その後、初台に流れてもう1軒と、
ヒドい飲み方をしたもんだ、ジッサイ。

同じ店の再訪より新規開拓が望ましい。
まだ暖簾が出てないものの、割烹風の「こまい」、
そして牛タン自慢の「萬月」、以上2軒に狙いを定めた。
定めはしたが開店まで1時間余りもある。
はて、時の名残りをいかにとやせん。

=つづく=