2019年2月1日金曜日

第2059話 ハマの波止場に帰って来たが・・・ (その1)

♪   霧の波止場に 帰って来たが
  待っていたのは 悲しいうわさ
  波がさらった 港の夢を
  むせび泣くよに 岬のはずれ
  霧笛が俺を 呼んでいる   ♪
    (作詞:水木かおる)

トニーこと赤木圭一郎が歌った「霧笛が俺を呼んでいる」。
1960年に封切られた同名映画の主題歌である。
当の本人はこの翌年、不慮のゴーカート事故により、
21歳の若い命を散らせてしまった。
小学二年生だったJ.C.は
事故当日のことを今でもよく覚えている。

歌はあまり上手じゃなかったけれど、
なぜか見る者を惹きつける個性的な風貌の持ち主で
好きな俳優の一人だった。
彼の映像を観たくって、ときどきカラオケでこの曲を歌うが
幼い日の吉永小百合に逢えるのも理由の一つ。
芦川いづみ、葉山良二、西村晃など懐かしい顔ぶれも―。
まさか悪役だった西村が後年、
黄門さまを演ずるとは夢にも思わなかったがネ。

てなわけで「第一亭」をあとにした御一行は
野毛の町に舞い戻り、カラオケ館でマイクを回し合ったあと、
霧の波止場に帰って来たのだった。
いや、ベツに霧は発生しちゃいませんでしたけどネ。

横浜市中区山下町。
ここは大桟橋と山下公園の町である。
(中華街もあるけれど)
1971年、ソ連の船で初めて日本を出国したJ.C.は
ここへ来るたびに懐かしくて心の疼きを覚える。
船が離れた大桟橋は様変わりしているし、
ブリッジやらタワーやら観覧車やら賑やかなことだが
あの日の波止場の姿は今でも生きている、わが胸の中に―。

外国船の船乗りが集うエキゾチックなバーだった、
「ザ・ホフブロウ」は現在も営業中。
マイナーチェンジが施されたとはいえ、
雰囲気は昔のよすがを偲ばせるにじゅうぶん。
ハマに不慣れな御一行もお気に召した様子だ。

ドイツビールのクロンバッハで乾杯。
すっきりとしたピルスナーは好きなタイプ。
小瓶だからすぐになくなり、
お次は小麦が原料のヴァイスビール、エルティンガーを。
ヴァイスのわりに酸味が比較的少ない。
たまにゃ、変わった銘柄も悪くない。

J.C.以外はみな初来店。
例によって料理選びの主導権を握りつつ、
おもむろにメニューを開いた。

=つづく=