2021年7月16日金曜日

第2699話 泡が2ミリの中ジョッキ

お不動さまの参道を逆に抜け出て

美容室の隣りのスーパーでロング缶を調達し、

飲みながらハサミに頭をまかせた。

 

いつも通りに理髪は45分で終了。

まだ16時前だが19時にはリカーストップとなる。

早めに仕掛けなくちゃと五反田へ向かった。

 

駅界隈を物色するもなかなか当たらない。

線路の西側、目黒川のほとりに建つビルの2階に

バカデカい看板を掲げる酒場あり。

目立つから存在を認知はしていても未踏だった。

品書きをチェックすると

ドライのエクストラコールドがあるじゃないか―。

よお~し、決めた、階段をトントントン。

 

リカーOK最終日の前々日、浅い時間で店内はガラガラ。

人の好さそうなオバちゃんに意中のコールドを通したら

今日はないんですと申し訳なさそう。

そりゃそうだネ、樽に余らせたらその後の処理に困る。

 

普段通りにドライの中ジョッキをグビ~ッ!

よく冷えていてノドが快感にふるえている。

「美味しいでしょう、毎日ていねいに洗浄してますから」

「ホントだネ、ところでいっぱいに注がなくていいから

 泡少なめでお願いできるかな?」

「ハイ、いいですヨ」

 

「こんな感じでよろしいですか?」

2杯目の泡の深さはたった2ミリ、もう完璧でうれしくて

オバちゃんをハグしちゃいたいくらいだ。

口の中をクリーミーな泡が満たすと味わいは格段に落ちる。

J.C.は校内暴力及び、口内発泡に絶対反対する。

 

「美味いねェ、タモリがTVで美味いねェってやってるけど

 アレとは比べものになんないねェ」

「ホホホ、でもあの人、飲めないんですよネ」

「エッ、そうなの?」

何だよぉ、タモリは視聴者をあざむいてたのかよぉ。

これから色メガネで見てやろう。

 

突き出しはひじき、マミツはとん平焼きを通す。

6切れにカットされたとん平がいいデキだ。

添えられたゆでもやしはあまりうれしくないが

食べてるうちに無いより在ったほうがよくなった。

 

居そうろうが3杯目の茶碗をおそるおそる出すごとく、

3杯目の中ジョッキをお願いしてみたら

オバちゃんニッコリ微笑み、再び泡2ミリを運んでくれた。

しかもサービスの枝豆をたずさえて―。

 

いたれりつくせりとはまさにこのこと。

五反田に来たら必訪の「酒蔵 ごたん田」と相成った。

イエス、アイ・シャル・リターン!

 

「酒蔵 ごたん田」

 東京都品川区西五反田1-4-2

 03-3490-9233