2021年7月30日金曜日

第2709話 上野はオヤジの心の街だ

日帰り出張で名古屋から酌友が上京して来た。

昼過ぎには横浜で仕事を終えるゆえ、上野で飲もうという。

帰ってゆく場所から遠のく上野に

わざわざ来なくともよさそうなものだが

かつての彼のホームグラウンドもこの街なのだ。

 

やれやれ、また上野かァ・・・。

そう思いながらも耳の奥で井沢八郎が聴こえ出す。

 

♪   どこでも飲めない あおりを食って

  入る酒場の ありがたさ

  上野はオヤジの 心の街だ

  飲まなきゃならない 人生が

  今日もここから 始まった  ♪

   (作詞:J.C.オカザワ)

 

駅前のマルイで落ち合い、向かったのは

上野一番の繁盛店「大統領 支店」ではなく、

その真正面に位置する「かのや」。

イチ推しはインドマグロの三点盛りである。

 

さっそくソイツを通しておいて

ドライの生を当方は大、相方は中ジョッキでガッチンコ。

近況を報告し合い、2杯目は中ジョッキに減量を試みた。

相方は八海山の冷酒に移行する。

 

赤身3・中トロ2・大トロ2切れを分け合うが

割り切れない赤身1切れは遠来の友に進呈。

大衆酒場らしからぬ質の高さに奴サン、

驚きつつ舌つづみを打っている。

 

しかし活気があるねェ。

平日の15時で8割方埋まっている。

それでいて台東区のコロナ感染者数はさほどでない。

 

上野はオヤジの心の街ながら

昨今は若い衆の襲来がいちじるしい。

そりゃ渋谷に比べればまだまだだが

あんな風になっちまったらオヤジは行き場を失う。

 

焼きとんを塩・タレ織り交ぜて何本か注文。

当方も富乃宝山のロックに切り替えた。

マミツの追加は厚揚げ焼きとカニクリームコロッケ。

すると、このコロッケがかなりの旨さ。

カニの身肉は見えずとも香りが立ちのぼった。

 

四人掛けを二人で占有していたところへ相席者が現れた。

若いカップルである。

ほどなく打ち解けて会話が始まった。

オヤジを敬遠しない心根のやさしい彼らは二十代。

職場の同僚だという。

 

訊けば、勤務先は東京を代表するホテル御三家の一つ。

館内のレストランでフロアを担当しているとのこと。

さわやかな二人に好きなドリンクを2杯づつ振る舞い、

二匹のオヤジは心の街をあとにするのでした。

 

「居酒屋 かのや 上野店」

 東京都台東区上野6-9-14

 03-5812-7710