2021年7月1日木曜日

第2688話 遠来の 友は何より 鰻好き (その1)

友あり、遠方より来たる。

福岡県・K市から新幹線に乗って―。

3年ぶりの上京に、何を食べたいか訊ねると

一も二もなく、うなぎと来たもんだ。

 

あゝ、いいヨ、任せなさい、ってなもんや三度笠。

チェーン店の「宇奈とと」というワケにはいかず、

ましてや牛丼屋のWうなぎともいくまい。

最近、頑張ることの多いJ.C.、この日も頑張った。

胃ブクロではなく、フトコロに頑張らせた。

 

待合せたのは築地本願寺前。

定刻に落合い、向かったのは

創業明治26年「つきじ宮川本廛」だ。

これで文句を言われたひにゃ、

あとはもう、ハブかマムシでも食わせるほかはない。

 

いや、ヤッコさん、歓びやしたネ。

満面の笑みがそれを物語っていた。

予約もせずに到着すると、待ち客2組4名。

日曜日の13時過ぎでこうだから

人気の老舗は「コロ助なんか、関係ねェ!」ってことサ。

 

待ってる間に注文を取られる。

うな丼・うな重を択べる、

イ・ロ・ハ・ニがあって価格帯は36304950円。

ただし、最安のイは売切れ。

というより単価が上がらないのでハナから出す気がないネ。

 

うなぎのランク付けは一様に質より量だから

年配者や女性にはキツいんじゃないかな。

このあたり歴史を誇る名店らしからぬ、あざとさを感じる。

よってロ(4070円)のうな丼と肝吸い(440円)を二つづつ。

お新香(770円)を一つお願いした。

 

たっぷり30分待ってようやく着席。

ドライの中瓶を注ぎ合ってグラスをカチン。

それにしてもテーブルのど真ん中で二人を隔てる、

アクリル板がうっとうしいのなんのっ!

 

ビールのアテのお新香が運ばれた。

他店では上新香と呼ばれるけれど

(上)を省くところが粋といえば粋だ。

ここで再びただし、内容に感心しなかった。

 

かぶ・きゅうり・にんじんの糠漬に

出来合いのなす塩漬・甘らっきょう・奈良漬。

殊に出来合い品の質がよくない。

以前はこんなじゃなかったハズだが・・・。

 

顔を見合わせて首をひねり、

お運びさんにビールの追加をお願いした。

 

=つづく=