2022年4月4日月曜日

第2985話 失楽園のブーゲンビリヤ (その1)

この日はアテもなく家を出た。

メトロ千代田線・千駄木駅の改札を抜けたら

都心に向かう代々木上原行きが発車したばかり。

ワンフロア下の我孫子行きに乗った。

 

この駅は上りと下りが横じゃなく縦並び。

地上を走る不忍通りの道幅が狭く、

2線路敷く工事が出来なかったためだ。

両隣りの西日暮里・根津駅も同じ状態。

我孫子まで行く気は毛頭なく北千住で降りた。

 

別段、食いたいものはナシ。

飲みたいものがあればヨシ。

存在を認知していたが利用したことのない、

「ブーゲンビリヤ」の店先に立ち止まった。

此処はインド料理店である。

 

素敵な店名が印象に残っていた。

おや? 聞こえてきたのは小柳ルミ子の歌声。

 

♪   髪にかざした ブーゲンビリヤ

  そえぬ運命(さだめ)に 赤く咲く

  海よ 海に流れが あるならば

  届けてほしい 星の砂   ♪

 

「星の砂」は1977年4月のリリース。

作詞は「サンデー・モーニング」の

現司会者、関口宏、作曲はヒデロザの出門英。

ブーゲンビリヤが登場する楽曲をほかに知らない。

 

あれは1983年4月15日。

東京ディズニーランドが開園するその日に

J.C.はシンガポールに赴任した。

 

最初の1年、勤務先からあてがわれて棲んだのは

先の大戦で日英の激戦地となった、

ブキッ・ティマ高地にある高級住宅地。

庭付き4階建て一軒家で

一画の共同ながらスイミング・プールまであった。

 

何とも豪勢なハナシだが

前支店長宅だから、さもありなん。

このとき庭の片隅にブーゲンビリヤが

赤紫の可憐な花をつけていたのを思い出す。

 

しかしながら、この大邸宅。

あまりに広すぎるのとオフィスから遠いのとで

1年後には今は無きシンガポール大丸の近くに

移り棲んだのだった。

 

=つづく=