2022年5月3日火曜日

第3006話 久しぶりだネ 裕やんだんだん

朝からずっと雨。
出かける気になれない昼下がり。
映画でも観ようとライブラリーから
引っ張り出したのは日活映画、
「嵐を呼ぶ男」(1957年12月)。

’58年の正月映画は裕次郎を一躍、
スターダムに押し上げた出世作である。
何度も観てるがときどきまた観たくなる。
彼の作品中、マイ・ベストはコレ。
夫人の北原三枝が択ぶのもこの1本だ。

劇中、北原扮する女性マネジャー
(モデルは渡辺プロの渡辺美佐)にフラれ、
裕次郎に食事をごちそうする羽目に陥った、
音楽評論家の金子信雄に向かって
裕次郎が言い放つ。
「ボカァ、飯より酒のほうがいいんですが・・・」

小学一年生でこれを見たJ.C.。
カッコいいなァ、大人になったらマネしよう。
憧憬を抱いて心に決めた。
これじゃロクな大人になれるワケがないヨ。
大学に入って本格的にバイトを始めてから
ずっとその生き方を実践している。
三つ子の魂、百までざんす。

たびたび登場するシーンが印象的だ。
五反田駅から北西に300m。
22段の短い石段があり、
この上に裕次郎一家が棲むアパートがある。

夜更けに部屋を飛び出し、
ドラム代わりにドラム缶を棒切れで叩く。
眠りを妨げられた周囲の住人たちから
罵声を浴びせられる。

あるときは弟役の青山恭二、
管理人の娘役の芦川いづみと
3人で段上から夕陽を眺める。
美しかった夕焼けも
今じゃビル群にさえぎられ、望むべくもない。
’18年11月に石段を訪ねた際、ブログにこう書いた。

ちょくちょく徘徊する谷中に
夕陽の名所、”夕やけだんだん”がある。
そうだ、あやかってこの石段を
”裕やんだんだん”と名付けよう。
そして五反田界隈にやって来たなら
必ずここを上り下りしてやろう。

行きたくなった。
翌日の天気予報は、晴れときどき曇り。
行きましたヨ。
上り下りしましたヨ。
久しぶりだネ、裕やんだんだん。
逢いたかったぜ。