2022年5月5日木曜日

第3008話 池上線に乗って (その2)

池上線を降りたのは池上駅。
別段、タイトルロールに敬意を表したつもりはない。
あの二人が出たのは池上駅と決めつけたからだ。
五反田ー蒲田間の全15駅を歩いて確信した。

新築なった駅舎の改札を出たら
左手の階段(東口・北口)を降りる。
果物店はないが西へ向かって商店街。
およそ120m行って左折すると
二人が渡ったハズの踏切がある。

線路脇には、みずほ銀行のATMコーナー。
渡りながら駅舎を振り返ると
プラットフォームに蒲田行きの電車を待つ、
人々が揃ってこちらを向いていた。

踏切を渡るくらいなら最初から南口に出れば
近道だが南口はやけにさびしい。
半世紀前なら尚更で若い二人が歩くのは物騒だ。

日蓮宗の大本山、池上本門寺に行ってみた。
境内には足を踏み入れず、山門で一礼し、
参道を引き返す。

あれは小学二年か三年のときだった。
とある日曜午後に級友2人と
平和島競艇場近くの母校正門で待ち合わせ。
誰の発案だか忘れたが
そこから長距離散歩をスタートした。

三差路だろうが十字路だろうが
曲がり角に来るたびに3人でじゃんけん。
勝った者が行く方向を決めるルールだ。
そうして到着したのが本門寺だった。

境内を一めぐりして門を出た頃、
日はとっぷりと暮れていた。
そりゃそうだろう、子どもの脚だもの。
おまけに角に出くわすたびに
じゃんけんぽん、あいこでしょだもんネ。

さて、春の日はまだ暮れずとも
晩酌タイムが間近い。
なおも町なかを歩き回り、
二人が通り抜けた商店街に舞い戻った。

ビールの銘柄を確認し、
「晴レ坊主」なる居酒屋に入店。
テルテル坊主のことらしいが
魚介と焼きとんの二刀流だ。

ドライの生がよく冷えており、
サーバーの手入れも行き届いて
スイスイとノドを通り過ぎてゆく。
焼きとんはカシラを塩、
牛のフワ(肺臓)をタレでー。

うん、水準をクリアしているネ。
変わっているのは当店のタレ。
片栗粉のトロみが
みたらし団子のそれにクリソツなのだ。

=つづく=