2022年5月17日火曜日

第3016話 海の珍味 あれこれ (その1)

雑司ヶ谷から千登世橋、面影橋と歩いて早稲田。
都の西北の杜に別段用は無いので
此処からひんぱんに出ている、
上野松坂屋行きのバスに乗った。

揺られながら肚を決める。
御徒町の「吉池」で晩酌用の肴を調達しよう。
今宵は家飲みだ。
その前に直営の「味の笛」で
生を2杯いただこう。

ノドを歓ばして目の前の鮮魚売り場へ。
ほほう、今日は珍品のオンパレードだ。
最初に目についたのは貝殻付きの生トリ貝。
貝からベロ~ンと伸びた舌先が
鳥のクチバシに似ているため、この名が付いた。
5個買い求める。

産地も名前すら明記がないが
魚貝に詳しいJ.C.には一目瞭然。
伊勢湾が主力のこの貝は愛知か三重のハズ。
訊ねると、売り場のオジさんは即答できず、
主任に訊きに行ってくれ、やはり三重だった。

続いて非常に珍しいイソギンチャク。
品札には柳川産イシワケイソギンチャクとある。
以前、銀座の「有薫酒蔵」で食べたが
味も食感もすでに忘却の彼方。
もちろん自分で料理したことなどない。
100gだけ仕入れといた。

そしてお次が本日のハイライト。
珍魚・ワラスボである。
ワラスボとは、わらしべのこと。
貧者が長者になるおとぎ話、
「わらしべ長者」の、あのわらしべだ。

主にカラッカラに干されて出荷される、
ワラスボの見てくれが
わらしべソックリなので、
こう呼ばれるようになった。

水を張ったバットに10尾ほどが
くたばりかけていたが
その下のバケツには泳いでいるのがいて
もちろん活魚を択ぶ。
これは3尾ゲットした。

帰り道。
こんなに買っちまって大丈夫かな?
しかも扱ったことのない連中ばかりだ。
だんだん不安になってきたヨ。
まっ、どうにかなるんだろうけどー。

=つづく=

「味の笛」
 東京都台東区上野5-27-5
 03-3837-5828